ナチュラル・ボーン・キラーズは特殊化するか?
Nature Reviews Cancer
2005年12月1日
ナチュラルキラーT (NKT)細胞は、マウスモデルの腫瘍退縮を誘導するが、この細胞は、細胞を介する抗腫瘍免疫応答も抑制する。このように対照的な作用がある理由は、よくわかっていない。Nadine Croweらは最新号で、NKT細胞には機能が全く異なるサブセットがin vivoで存在し、その存在が、一部のNKT細胞にのみ抗腫瘍作用が認められる理由の説明に役立ちうることを明らかにしている。
Croweらは以前の試験で、肝由来のNKT細胞によって、モデル系2種(3-メチルコラントレン誘発肉腫細胞系MCA-1を注入したマウスと、メラノーマ細胞系B16F10を注入したマウス)の抗腫瘍免疫応答が促進されることを示した。この両モデルを用いたところ、NKT細胞を欠失し、J 18を含むT細胞受容体(TCR) -鎖(TCR J 18と表記)のないマウスでは、腫瘍増殖が起きやすいことがわかった。いずれの腫瘍モデルにおいても、NKT細胞が抗腫瘍応答を促進する能力は、そのインターフェロン産生に依存していた。これまでの報告によると、マウスおよびヒトのNKT細胞には、表現型が明らかに異なるサブセット少なくとも2種類(CD4+およびCD4-のNKT 細胞)あり、こうしたサブセットのそれぞれがin vitroで異なるサイトカインを産生する。Croweらは、NKT細胞のサブセットは機能のみならず、表現型も明らかに異なるという考えを検証するため、NKT細胞を脾、胸腺および肝から単離し、MCA-1細胞を注入したTCR J 18欠失マウスにそれを養子移植した。腫瘍増殖を完全に阻害できたのは、肝由来のNKT細胞のみであり、この保護作用は主として、NKT細胞のCD4- 集団によってもたらされていることがわかった。胸腺由来のNKT細胞が保護作用を発揮できないのは、それらが移入から少なくとも1週間は肝をはじめとする臓器から容易に検出されたことを考えると、移入後にその生存能力が損なわれたことによるものではなかった。
肝由来のNKT細胞がMCA-1モデル選択的に活性化した可能性があることから、Croweらは次に、B16F10モデルでさまざまなNKT細胞のサブセットを検証した。このモデルでは、肝由来NKT細胞を移入したB16F10接種TCR J 18欠失マウスを汎NKT細胞活性化分子のガラクトシルセラミド( -GalCer)で処理したところ、肺転移の形成を阻害することができた。MCA-1モデルと同様に、脾由来および胸腺由来のNKT細胞は、肝由来の NKT細胞よりも腫瘍増殖を妨げる効果が小さく、肝由来NKT細胞のCD4-サブセットは、CD4+ NKT細胞のサブセットよりも抗腫瘍応答を促進する能力が高かった。しかし、インターロイキン4 (IL-4)欠失マウスから単離した肝由来のNKT細胞については、転移形成を防ぐ能力が野生型よりもかなりすぐれており、また、このマウスの胸腺由来 NKT細胞にも保護能力があったことから、こうした差は、インターフェロン産生量の差からくるものではなさそうであった。このことからは、NKT細胞によるIL-4産生が、この細胞が腫瘍拒絶をメディエートする能力に拮抗しうることがわかる。しかし、肝由来の野生型NKT細胞は、胸腺由来の野生型NKT細胞とほぼ同量のIL-4を産生し、そうなると胸腺由来細胞にこの保護能がない理由がわからない。
この試験は、NKT細胞には機能が明らかに異なるサブセットがin vivoで存在することを示すと同時に、NKT細胞に基づく抗腫瘍療法を考えるにあたっては、いずれのNKT細胞サブセットが最も効果的な抗腫瘍応答を呈するかを明らかにすることが重要であることを強調している。
doi:10.1038/nrc1762
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