Research Highlights

多目的変異

Nature Reviews Cancer

2005年12月1日

ゲフィチニブなどのチロシンキナーゼ阻害因子はこれまで、非小細胞肺癌(NSCLC)患者を対象にした大規模臨床試験で検討されてきており、その有効性は、上皮増殖因子受容体(EFGR)の特異的変異によるものとされてきた。Daniel Haberらは、ゲフィチニブに対する耐性の獲得と関連づけられてきたEGFRの変異が、気管支肺胞型肺癌に対する遺伝的感受性をも決定することを明らかにしている。

Haberらは最近のJournal of Clinical Oncologyで、EGFR変異を用いれば、ゲフィチニブに迅速かつ劇的に反応する明確な患者サブセットを特定できると報告している。この変異は、キナーゼのATP結合ポケットにあって、薬物阻害に対するその感受性を高めるアミノ酸に影響を及ぼす。一方、T790M変異につながるEGFRのただひとつのミスセンス変異は、こうした薬物に対する耐性をメディエートしている。Haberらは、こうした薬物で治療していない腫瘍にこの変異が起きていること、すなわち、それが腫瘍形成に関与している可能性があることに気付いた。

HaberらはNature Geneticsで、気管支肺胞型の肺癌患者が5例出た家族を分析している。この家族には、ヘテロ接合型生殖細胞系列のT790M変異が遺伝していた。いくつかの腫瘍サンプルには、生殖細胞系列の変異のほか、cisに遺伝型変種が現われる特徴的なEGFR活性化変異も認められた。

では、薬物耐性変異はどのようにして、肺癌になりやすい素因をもたらすのだろうか。Haberは、遺伝型のT790M変異が単独で気管支肺胞細胞のEGFRシグナル伝達を変容させ、細胞の生存能および増殖能を高めるのではないかとしている。その上で体細胞のEGFRが変異すると、基質特異性および触媒活性がさらに変容して腫瘍形成が助長されうる。

doi:10.1038/nrc1765

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