TIE2の制約は小さい
Nature Reviews Cancer
2005年11月1日
骨髄由来細胞は、腫瘍血管新生で重要な役割を担っている。Luigi Naldiniらは以前に、アンギオポエチン受容体TIE2を発現する腫瘍浸潤細胞のサブセット(TIE2を発現する単球、TEM) を特定しており、最新号では、TEMが腫瘍血管形成に必要な向血管新生単球のまぎれもない造血系譜であることを明らかにしている。
Naldiniらは、Tie2の転写調節配列が含まれるレンチウイルスベクターの制御下でグリーン蛍光タンパク質(GFP)を発現するトランスジェニックマウスモデルを作製した。上記マウスの皮下で増殖したマウス乳腺腫瘍(N202)は、血管内皮細胞(TIE2+ CD31+ CD45-)集団、造血TEM (TIE2+ CD11b+ CD45+)集団、間質細胞(TIE2+ CD31- CD45- CD13+)の希薄な集団でGFPを発現した。Tie2の制御下でチミジンキナーゼ(TK)トランスジェニックマウスを作製し、N202腫瘍を定着させた上でガンシクロビルを投与してTK発現細胞を死滅させたところ、内皮細胞に相当な量のアポトーシスが生じて腫瘍が退縮し、それ以上の腫瘍増殖は完全に妨げられた。同じくTIE2を発現する造血幹細胞には影響がなく、処置マウスには引き続き正常な造血が認められたことから、ガンシクロビル感受性TEMは、多能性造血前駆細胞とは明らかに異なると考えられる。
では、こうした所見は、より臨床に関連したモデルにも通じるのだろうか。Naldiniらは、自らの所見を、RIP1−Tag2マウスに自然発生する膵腫瘍およびヌードマウスで同所性に増殖するヒトグリオーマにまで拡大した。いずれのマウスも、以前にTie2−GFP導入骨髄細胞を移植したものである。Naldiniらは、TIE2−GFP TEMが腫瘍には存在するが、周囲組織には存在しないこと、TEMが強力な向血管新生分子である塩基性線維芽細胞増殖因子を発現すること、さらには、腫瘍の血管密度がきわめて高いことを突き止めた。TEM (図中では、緑色に染色)は、腫瘍に浸潤する単球およびマクロファージ(青)のごく一部であり、血管周囲に位置することが多いが、内皮細胞のCD31マーカー(赤)は発現しない。さらに、TIE2−TK骨髄を有するヌードマウスにグリオーマ細胞を移植し、ガンシクロビルを投与してTEMを除去すると、腫瘍は当初増殖するが、その後、無血管となり退縮した。
これらのデータからは、ここで使用した実験モデルで腫瘍に動員される骨髄由来細胞の向血管新生活性は、その大部分がTEM活性に起因していることがわかる。そのため、TEMは、血管新生スイッチの重要なエフェクターではないかと思われる。腫瘍内でTIE2を発現する全細胞を標的とした治療戦略については、さらに検討する価値がある。
doi:10.1038/nrc1743
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