Research Highlights

阻害可能

Nature Reviews Cancer

2005年10月1日

BCR−ABLのキナーゼ活性はイマチニブによって阻害されるが、薬物抵抗性の発現が、さらに踏み込んだ介入戦略の探求を促した。その白血病誘発特性には、チロシンキナーゼ活性増大のほか、融合タンパク質が主として細胞質に局在していることが寄与すると考えられている。BCR−ABLのC末端にあるFアクチン結合領域(FABD)は、部分的にではあるがこの局在を調節すると考えられているため、Oliver Hantschelらは、その立体構造を分析した。

ABLは核にも細胞質にも局在し、これを決めるのは環境である。しかし、BCR−ABLはそうではなく、いずれもタンパク質の局在を支配する同一のC末端領域を有する。この領域には、キナーゼを核内に移行させることができる核局在シグナル3種、FABDの一部である推定上の核外移行シグナルおよびFABD そのものがある。Hantschelらは、異核核磁気共鳴分光法を用いてヒトABLのFABDの3D構造を明らかにし、FABDが折りたたまれて逆平行ヘリックス4個の小束になっていること、この領域の3D構造には、やはりFアクチンと結合しているものもある、ほかの細胞骨格タンパク質との強い相同性が認められることを確認した。以前の所見とは異なり、単離ペプチドとして人工的な環境におかない限り、核外移行シグナルは非機能性であり、FABDの疎水性コアの一部であることがわかっている。

FABDはどのようにして、ABLおよびBCR−ABLの局在に影響を及ぼすのだろうか。Hantschelらはこの疑問に取り組むため、FABDの構造に基づいてABLおよびBCR−ABLの変異型を21個作製し、培養細胞を用いてその局在を検討したほか、無細胞系を用いて精製Fアクチンとの相互作用を検討した。その結果をみると、ABLではFABDの消失によって核局在が起こるが、BCR−ABLではこれが起こらないことがわかる。両FABDは同じであるため、融合タンパク質には、これを細胞質にとどめておく他の特性があるはずである。Hantschelらが予備試験で得た証拠からは、融合タンパク質のキナーゼ活性が増大しても核からBCR−ABLを締め出すには不十分であること、BCRのコイルドコイル領域が重要であることがわかっている。

正確な機序に関係なく、以前のデータからは、BCR−ABLのFABD領域を妨害すると、その発癌性が抑えられることがわかっている。 Hantschelらは、ヘリックスの少数の保存残基にFアクチン結合部位をマッピングしている。Hantschelらは、このことと構造データとから、上記保存残基を薬理学的に妨害することが、BCR−ABLを阻害する方法として妥当ではないかとの結論を導いている。

doi:10.1038/nrc1723

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