Research Highlights

花の力

Nature Reviews Cancer

2005年10月1日

モクレンの根および樹皮は伝統的な和漢薬であり、この植物の有効成分ホオノキオールは、実験モデルに抗腫瘍作用を示す。Kenneth Andersonらは最新号で、ホオノキオールの作用機序を推測し、この成分が多発性骨髄腫細胞の薬物抵抗性に打ち勝ちうることを明らかにしている。

ホオノキオールは、多発性骨髄腫細胞系および再発性難治性の多発性骨髄腫患者から単離した腫瘍細胞の増殖を阻害したが、正常な末梢血単核球には阻害作用を示さなかった。多発性骨髄腫に用いる薬物の多くは、カスパーゼの活性化によって腫瘍細胞死を誘導するが、実際、Andersonらは、ホオノキオールもカスパーゼ依存性経路からアポトーシスを誘導していることを明らかにした。しかし、アポトーシスの誘導は、汎カスパーゼ阻害剤z-VAD-fmkによって部分的に遮断されるに過ぎないことから、Andersonらは、カスパーゼ非依存性活性化の証拠を捜し、ホオノキオールが、ミトコンドリアからのアポトーシス誘導因子放出を誘導することによって、カスパーゼ非依存性細胞死を促進していることを突き止めた。

骨髄腫治療によく用いられる薬物に抵抗性を示す骨髄腫細胞でも、ホオノキオールがアポトーシスを誘導することは重要である。また、ホオノキオールとプロテアソーム阻害剤ボルテゾミブとを併用して多発性骨髄腫細胞を処理すると、腫瘍細胞増殖の阻害が拡大した。Andersonらはこの理由を、ボルテゾミブが通常刺激し、ボルテゾミブによるアポトーシスへの抵抗性を生じうる熱ショックタンパク質発現をホオノキオールが調節しているため、と考えている。ホオノキオールは、多発性骨髄腫にみる薬物抵抗性のもうひとつの根源、すなわち骨髄でのインターロイキン6およびインスリン様増殖因子(いずれも腫瘍増殖を助長する)の産生をも抑制する。再発性難治性の多発性骨髄腫に対するホオノキオールの効果を検証するには、臨床試験の実施が妥当である。

doi:10.1038/nrc1734

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