スターのスクリーン・テスト
Nature Reviews Cancer
2005年6月1日
米国のジャーナリストKatie Couricは、大腸癌スクリーニングについて「後悔する前に、検査しよう」と言っている。しかし、それは複雑で感情を伴う問題であるため、癌スクリーニングの奨励は議論の分かれるところである。このため、個人的に重要な癌スクリーニング・プログラムを著名人らが宣伝する最近の傾向には、厳しい視線が注がれるようになった。実際のところ、スクリーニングはよいことなのだろうか。また、実際に何か影響はあるのだろうか。
この問題に取り組み、答えを見つけるため、Robin J. Larsonらは、2001年から2002年にかけて米国で実施された無作為電話調査から得たデータを分析した。この結果が、スクリーニング対象年齢の米国民を代表するサンプルに、著名人による癌スクリーニングの宣伝を見たことがあるかどうかと、その影響を受けているかどうかについてたずね、それにより得た初データとなっている。
Larsonらは、電話がつながった人のうち、調査対象として適格であることがわかっている人(すなわち、スクリーニング対象年齢であり、癌の既往がない)の72%、適格の可能性があると考えられる人の51%が調査に回答したと報告している。ここに含まれるのは、40歳以上の女性360例および50歳以上の男性140例であった。さまざまなスクリーニング・プログラム「について、著名人が話しているのを見たり聞いたりしたことがある」かどうかをたずねたところ、ほとんどの人(マンモグラフィについては女性の73%、前立腺特異抗原 (PSA)検査については男性の63%、S状結腸鏡検査または結腸鏡検査については、成人の52%)が「はい」と回答した。さらに、著名人による宣伝を聞いたことがある人のうち、スクリーニングを受ける可能性が高いと答えた割合は、マンモグラフィが25%、PSA検査が31%、S状結腸鏡検査または結腸鏡検査が37%であった。
Larsonらは、この調査には制限があることを認めている。たとえば、この調査パラメータからは、著名人による宣伝が、それを推奨されていない個人に対して、スクリーニングを利用する気にさせたかどうかに関するデータはないことがわかる。しかもLarsonらは、上記分析結果が、与えられた質問に対して「正しい(と思う)答え」を出したいという回答者らの気持ちの影響を受けているかどうかは確認できていない。
個人レベルでは、癌スクリーニングを受けるということは、広範囲にわたって影響を及ぼす可能性があり、軽々しく受けるべきではない。このため、米国予防医療特別委員会などの組織は、スクリーニングを受けるかどうかを決める前に十分に情報を得た上で熟考することをさらに推奨している。Larsonらは、説得ではなく情報を提供することが、癌スクリーニングへの最適な取り組みであるとし、著名人らの「検査しよう」という情に訴えかけるような一方的な主張は、この考えに合わないと考えている。
doi:10.1038/nrc1642
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