Research Highlights

セツキシマブは立体配座を操る因子を阻止する

Nature Reviews Cancer

2005年6月1日

上皮増殖因子(EGF)受容体(EGFR)は、ほかのERBB受容体チロシンキナーゼと同じく、細胞の増殖、運動性および分化を調節し、その調節不全が、さまざまな上皮癌に関わっている。Fergusonらは、X線結晶回折法により、EGFR阻害因子セツキシマブ(現在、進行大腸癌治療に用いられている)が、EGFRシグナル伝達を物理的にどう遮断しているかを明らかにした。

EGFRシグナル伝達の引き金は、EGFR受容体の二量体化によって引かれる。二量体化には、EGFリガンド(EGFそのもの、トランスフォーミング増殖因子、アンフィレギュリンおよびベータセルリンなど)が、EGFR細胞外領域と結合する必要がある。上記リガンドがEGFRの細胞外領域2カ所(領域Iおよび III)と結合すると、その受容体の立体配座が変化して、二量体化領域(領域II)が露出する。これが、その隣接物と二量体化できる立体構造をした受容体を効率よく捕促する。

セツキシマブは、EGFRの細胞外領域に高い特異性で結合し、受容体の二量体化およびシグナル伝達を妨げるヒト-マウスキメラモノクローナル抗体である。Fergusonらは、EGFRの可溶性の細胞外領域と複合したセツキシマブ抗原結合(Fab)フラグメントの結晶構造を明らかにし、Fabフラグメントがもっぱら受容体の領域IIIと結合し、増殖因子結合部位と一部重複するエピトープをカバーすることによって、リガンドがこの重要領域にアクセスするのを遮断することを突き止めた。

セツキシマブはリガンド結合を妨げるが、さらにその抗体の重鎖(VH)領域も EGFR領域Iが二量体化に必要な立体配座をとるのを立体的に妨げている。二量体化能のある立体配座には通常、リガンド結合が必要であるため、このように立体配座をとらせないことの重要性は不明である。しかし、Fergusonらは、EGFRまたはそれ以外のERBB受容体の異所的な過剰発現時における、おそらくは EGFRのヘテロ二量体化またはホモ二量体化を介したリガンド非依存性のEGFR活性化を妨げるのに、それが一役買っているのではないかと指摘している。

EGFRシグナル伝達を遮断するための拮抗的リガンド類縁体はまだ見つかっていないが、Fergusonらの試験成績をみると、上記類縁体をよりかさ高い分子と融合させて改善し、その力価を拡大できる可能性が浮上してくる。 Fergusonらはさらに、セツキシマブエピトープを特定しておくと、薬物に対する感度の増減につながるEGFRの体細胞突然変異をスクリーニングする際に有用になると指摘している。

doi:10.1038/nrc1635

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