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Nature Reviews Cancer
2005年5月1日
膜型1 (MT1)-MMPを含むマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)は主として、細胞外マトリックス(ECM)成分の加水分解で知られている。しかし、最近では、その基質の範囲がはるかに広いことが明らかになりつつある。Stephen Weissらは、MT1-MMPが、血小板由来増殖因子B (PDGFB)とのその受容体PDGFR を通じたシグナル伝達に変更を加えて、微小血管系の発生を調節することを示している。
血管壁の完全性は、壁細胞の外鞘と、内側の内皮細胞との相互作用に依存している。壁細胞の機能はPDGFBを介するシグナル伝達が調節しており、このシグナル伝達はPDGFBとPDGFR との相互作用のほか、さまざまな副因子によって調節されている。Weissらはこれを受けて、壁細胞特異的なMT1-MMP発現は、この細胞の血管系発生への動員を伴うとする以前の報告を検討した。
組織学的分析では、若いMT1-MMP-/-マウスの大動脈には欠損が認められたが、これを培養すると、MT1-MMP-/-壁細胞とMT1-MMP+/+壁細胞とは視覚的に区別がつかなかった。しかし、MT1-MMP-/-細胞をさまざまな増殖因子で処理したところ、その増殖および化学走性反応に異常が認められたが、それは細胞を刺激するのにPDGFB を用いた場合に限られた。
PDGFBおよびPDGFR のレベルおよびそのリン酸化の程度は、野生型細胞およびMT1-MMP-/-細胞とほぼ同じであった。しかも、MT1-MMPはPDGFBの有無に関係なくPDGFR と結合することがわかった。しかし、細胞外シグナルによって調節される活性キナーゼ1/2とAKTレベルの増大およびアクチン重合の変化といった正常な PDGFBシグナル伝達反応が、MT1-MMP-/-細胞では大幅に少ないか、または認められなかった。
PDGFBに対するMT1-MMP-/-細胞の反応は、野生型MT1-MMPのレトロウイルス発現によって修復されたが、触媒作用が不活化したMT1-MMPではそうならなかった。さらに、(通常はMT1-MMPおよびPDGFR が検出されない)COS-1細胞には、MT1-MMPとPDGFR が同時発現した場合にのみ、PDGFBに対する最適なシグナル伝達反応が生じた。したがって、触媒活性のあるMT1-MMPは、PDGFB?PDGFR シグナル伝達複合体の重要な成分である。
さらに、MT1-MMP-/-マウスの血管形態は、PDGFR 変異体の形態の表現型を模写しているようである。同じく、MT1-MMP-/-マウスから得た外植組織は、キメラのPdgfr -/- Pdgfr +/+マウスから得たPdgfr -/-細胞の創傷治癒反応を反映している。
以上のことから、壁細胞がPDGFB?PDGFR を通じてシグナル伝達するには、MT1-MMPが必要である。この経路は、増殖腫瘍の血管系を安定化する上できわめて重要であることから、MT1-MMP がこの過程に必要であるという発見によって、腫瘍の血管新生コントロールに利用できる治療標的がその姿を現した。
doi:10.1038/nrc1623
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