殺しのコンビ
Nature Reviews Cancer
2005年5月1日
ヒトパピローマウイルス(HPV)感染により子宮頸部に炎症反応が起こると、子宮頸癌のリスクが増大する可能性がある。これは、Mary Carringtonらが最近実施した試験の結論である。ナチュラルキラー(NK)細胞は、ウイルスおよび腫瘍に対する自然免疫応答の重要な構成要素であり、その活性化は、キラー免疫グロブリン様受容体(KIR)などの阻害受容体と活性化受容体とのバランスに一部依存すると考えられている。KIRは、標的細胞上の特異的ヒト白血球抗原(HLA)クラスIタンパク質と結合し、考えうるKIRおよびHLAのハプロタイプは相当な範囲に及ぶことから、KIR- HLA相互作用のバリエーションの範囲は計り知れない。Carringtonらは、KIRとHLAクラスIタンパク質との特定の組み合わせが、子宮頸癌の発生リスクを高めることを明らかにしている。
Carringtonらは、子宮頸癌患者およびそうでない患者のHLAクラスI対立遺伝子の頻度を検討するところからはじめ、阻害型KIRに親和性の高いリガンドであることがわかっているHLA対立遺伝子グループ(HLA Cwグループ2およびHLA Bw4対立遺伝子)の一部が、この癌のリスクを低下させることを突き止めた。
このほか、子宮頸癌患者はそうでない集団よりも、一部の活性化型KIR (KIR3DS1など)の発現頻度が高いことも突き止めている。しかも、KIR3DS1とHLA Cwグループ2との作用と、KIR3DS1とBw4対立遺伝子との作用を検討したところ、子宮頸癌に対する感受性に勾配があった。
しかし、子宮頸癌の予防には、必ず何かが犠牲になる。ある疾患に抵抗すると、別の疾患に対する感受性がもたらされる。NK活性化を促進するKIR遺伝子と HLA遺伝子との組み合わせは、ウイルス疾患に対する抵抗性の増大につながることがすでにわかっているが、疫学データからは、ウイルス性疾患から体を保護するKIR/HLA遺伝子型が、自己免疫疾患に対する感受性をもたらすことがわかる。
Carringtonらは、発癌性HPVを有する女性患者の病変は往々にして子宮頸部の炎症を伴うと指摘し、NK活性化が局所炎症に寄与することによって、発癌を助長しているのではないかとしている。ただ、これまでにも炎症がほかの癌と関連付けられてきたとはいえ、炎症、形質転換、NK細胞の役割の関係を明らかにするには、さらに研究を重ねる必要がある。
doi:10.1038/nrc1616
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