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Nature Reviews Cancer
2005年3月1日
炎症と癌とのつながりは十分に確認されており、クロマチンリモデリングと癌との関係も明らかであるが、一見したところ、この3経路がすべてつながっているというのは驚きである。しかしこの関係が、Oleksi PetrenkoとUte Mollによる、向炎症性タンパク質マクロファージ遊走阻害因子(MIF)に関する研究で発見された。
MIFは、炎症反応時にマクロファージおよびT細胞のいずれをも活性化し、転写因子の E2Fファミリーに影響を及ぼすことがすでに明らかにされている。MIFノックアウト細胞は、E2F依存性の特徴である増殖能および発癌性形質転換能が低いが、MIFとE2Fとの分子間相互作用の性質はわかっていない。
E2Fタンパク質が遺伝子発現を活性化したり抑制したりする能力は、網膜芽細胞腫 (RB)タンパク質ファミリーのメンバーによって調節されている。RBはE2Fとともに、遺伝子転写を抑制し、特異的遺伝子プロモーターとの結合によって S期への進行を阻害する。E2FがRBファミリーメンバーから開放されると、E2F依存性遺伝子転写が可能となる。ただし、ここで重要となってくるのは、 RB複合体が、DNA複製複合体の成分と相互作用することによってクロマチン高次構造およびDNA複製をも調節していることである。Petrenkoと Mollは、遺伝子の発現と欠失に関する一連の実験を実施し、MIFを発現しないマウス胚線維芽細胞の増殖能は、E2Fを介する遺伝子転写に不備があっても損なわれないことを明らかにした。そのかわりに、この線維芽細胞は、RBがヒストン脱アセチル化酵素を動員してクロマチン構造を縮合させる能力を E2F4が抑制できないこと、MIF発現不在下ではE2F4がヒストンアセチル基転移酵素の動員を促進してDNAの開放およびDNA複製をあまり行えないことによって妨害を受ける。
以上の所見から、MIF発現の増大につながる慢性炎症は、RBを介するE2F応答遺伝子の抑制に拮抗することがわかる。これにより、活性E2FがDNA複製を開始させる能力が増大し、増殖および腫瘍形成が助長されるのではないかと思われる。PetrenkoとMollは現在、MIFのin vivo での役割を検討している。
doi:10.1038/nrc1582
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