記憶
Nature Reviews Cancer
2005年2月1日
T細胞に基づく癌治療法はいずれも、腫瘍の根絶のみならず、この状態を長期間維持することをも目的としている。それには、免疫記憶を確立する必要がある。
Daniel Powellらは、標準の治療法には不応であることが明らかになった悪性メラノーマ患者において、治療が誘発する免疫応答を検討した。この患者らには、免疫抑制薬(シクロホスファミドおよびフルダラビン)を7日間投与した上で、ex vivoで拡大培養しておいた患者自身の腫瘍浸潤リンパ球の養子免疫細胞移植を実施した。奏効した患者のうち、のちに腫瘍浸潤細胞集団にも末梢血細胞集団にも腫瘍反応性T細胞が見つかった患者をさらに検討した。
CD8+エフェクターT細胞の絶対数は、養子細胞移植から1週間後にピークとなり、この移植からほぼ2カ月後、どの患者も末梢血中の抗原特異的T細胞数が高値を維持していた。この細胞をin vitroで分析したところ、CD45RO発現およびLセレクチン(CD62L)とケモカイン受容体CCR7の共発現欠如など、エフェクターメモリーT細胞に関連するマーカーをいくつかもっていることが明らかになった。共刺激分子CD28の発現増大と同じく、インターロイキン7受容体- の即時アップレギュレーションも明らかになった。
T細胞分化および記憶生成に関わるもうひとつの共刺激分子が、CD27である。この分子をダウンレギュレーションする患者T細胞のex vivo活性化と一致して、患者のほとんどは当初CD27を発現していなかった。しかし、T細胞を介する抗腫瘍反応を呈した患者のCD27-CD28+ T細胞のサブセットは、経時的に消失し、安定なCD27+CD28+CD8+ T細胞集団に代わった。
Powellらは、ex vivo刺激後、in vivoで早期にCD27を発現する移植T細胞は、生き残ってエフェクターメモリーT細胞サブセットを誘発する可能性が高いとの結論に達している。評価したのは6例のみであるが、上記の結果からは、今後もこのような患者を対象に、この特定の細胞サブセットが存続する理由を明らかにするための研究を実施することが妥当であることがわかる。
doi:10.1038/nrc1556
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