再活性化
Nature Reviews Cancer
2005年1月1日
免疫抑制薬メトトレキセート(MTX)による治療を受けている関節リウマチおよび多発性筋炎の患者は、健常者または非免疫抑制薬による治療を受けている患者よりもEpstein-Barrウイルス(EBV)陽性リンパ腫の発生頻度が高い。Wen-hai Feng, Jeffrey I. Cohenらは現在、免疫抑制作用と潜伏EBVの再活性化とが合わさることによって、MTXが上記患者のEBV陽性リンパ腫を助長しているものと思われると報告している。
潜伏感染は、B細胞の形質転換に関連しているが、ウイルス粒子の放出および宿主細胞の死につながる溶解感染も、潜伏EBVに感染したB細胞の数を増大させ、悪性腫瘍の可能性を高めると考えられている。FengとCohenらは薬理学的用量のMTXを用い、潜伏感染したEBV陽性の胃癌細胞系(AGS-EBV-GFP)およびEBV陽性リンパ芽球様細胞系(LCLs)において、MTXが溶解感染を引き起こすことを明らかにした。関節リウマチの治療に用いられる他の薬物に、このような作用はなかった。
FengとCohenらは、MTXが直接、溶解EBV遺伝子発現を引き起こすかどうかを検討するため、EBV陰性細胞に、レポーター遺伝子に連結した早期溶解ウイルスタンパク質BZLF1およびBRLF1のプロモーターを移入したのち、 MTXで処理したところ、このレポーター遺伝子の発現は、いずれの実験でも2倍を超えた。では、この発現により、溶解EBV DNAが複製されるのだろうか。AGS-EBV-GFP細胞をMTXで処理すると、溶解EBVゲノムのコピーが増大し、この作用は抗ウイルス薬アシクロビルの追加によって阻害された。同じく溶解ウイルス遺伝子の発現を誘発するゲムシタビンではEBV DNAの複製が増大しなかったことから、この複製の誘発はMTX特異的であると思われる。さらに、MTXで処理したAGS-EBV-GFP細胞の無薬物培地を取り出し、EBV陽性Burkittリンパ腫細胞系を感染させるのに用いたところ、その感染細胞にGFP発現が検知され、MTXが感染性ウイルス粒子の放出を誘発したことがわかった。
では、MTXは、関節リウマチ患者または多発性筋炎患者のEBV量に対して、どのように作用するのだろうか。MTXを含む治療を実施した29例の平均EBV量は、細胞106個のゲノムにつきEBVコピー数40であり、これに対して、 MTX を含まない治療を実施した12例のEBVコピー数は5.1であった。
FengとCohenらは、免疫系を抑制しながらEBV複製を誘導するMTXの独特な能力が、すでに悪性腫瘍のリスクが高い患者におけるEBV陽性リンパ腫との関連性を説明しているのでは、との結論を導いている。癌患者のMTX治療が EBV再活性化に何らかの作用を及ぼしているのか、EBV関連腫瘍と何らかの関わりがあるのかについては、詳しく検討する必要がある。
doi:10.1038/nrc1531
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