細胞死へチェックイン
Nature Reviews Cancer
2005年1月1日
癌全体の半数は細胞周期調節因子p53が変異しており、残る半数の大部分はこの因子が間接的に不活化されている。これは、p53非依存性細胞死に関与する経路が、癌の重要な治療標的であることを意味する。このような経路で有望視されているもののひとつが、DNA損傷に反応してp73を介するアポトーシスであり、Carol Privesらは、p73を活性化させる決定的な成分をいくつか特定した。
Privesらはまず、TP73 mRNAが、化学療法薬エトポシド、カンプトテシン、ダウノルピシンおよびドキソルビシンをはじめとする種々物質によるDNA損傷に反応して、ヒト腫瘍細胞系に蓄積することを明らかにした。次に、DNA損傷チェックポイントの成分で、細胞周期停止、DNA修復およびアポトーシスの誘導に不可欠な2つのチェックポイントキナーゼ、CHK1 およびCHK2の検討にあたった。短い干渉RNA (siRNA)を用いてCHK1およびCHK2の産生を調節したところ、この2つのタンパク質は、DNA損傷に反応したTP73 mRNAおよびp73タンパク質のいずれの蓄積にも必要であることがわかった。
では、CHK1およびCHK2は、TP73の転写にどのような影響を及ぼすのだろうか。Privesらは、TP73 mRNAを誘発することができ、DNA損傷に反応してTP73プロモーターと結合し、p73がE2F1によるアポトーシスに必要であるという理由から、転写因子E2F1の役割に興味をもった。そして、E2F1がDNA 損傷に反応したCHK1およびCHK2によって安定化することを解明したほか、E2F1の誘導的変異型を用いて、p73の蓄積につながるのがこのE2F1 の安定化であることを明らかにした。このことから、E2F1はチェックポイントキナーゼによって調節され、DNA損傷後にTP73 プロモーターを活性化するきわめて重要な転写因子であることがわかった。
最後にPrivesらは、この4つのタンパク質がp53非依存性アポトーシス時に同じ経路で作用しているという確証を得るため、CHK1、CHK2、 E2F1、p73のいずれかひとつをダウンレギュレートすることで、通常はDNA損傷に反応して起こるアポトーシスが妨げられることを確認した。DNA損傷とTP73の転写および安定化との結びつきがはっきりしたことから、Privesらは次に、p73はどのようにしてp53非依存性アポトーシスを介するようになるのかという差し迫った問題を提起している。また、癌の治療標的となる可能性が高まった上記因子を検討する新しい実験を提案し、 p53非依存性アポトーシスにおけるp53関連タンパク質、p63の役割について考えている。
doi:10.1038/nrc1538
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