Research Highlights

複数の敵

Nature Reviews Cancer

2004年12月1日

長期にわたりイマチニブ(Glivec)による治療を受けている慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病および消化管腫瘍の患者は、ほぼ必ず抵抗性を獲得する。最近になって、イマチニブ抵抗性の機序がいくつか明らかにされているが、Burgerらは新たに、乳癌の抵抗性遺伝子BCRPを介する別の機序を特定している。

イマチニブは、BCR-ABL1、KITおよび血小板由来増殖因子受容体に対して効果があるチロシンキナーゼ阻害因子の経口投与薬である。消化管内における BCRPの発現レベルが高く、BCRPが薬物輸送体のABCファミリーのメンバーであるとすれば、BCRPが血中へのイマチニブ取り込み制限に関与しているためにイマチニブのバイオアベイラビリティーが低下している可能性がある。そこでBurgerらは、イマチニブがBCRPの基質かどうかという問題を立てた。Burgerらはまず、乳癌細胞の亜系で、BCRPの野生型(Arg482)が過剰発現しているものと、基質に特異的に影響を及ぼすことがすでにわかっている変異型(Thr482)が過剰発現しているものの2種を用いた。薬物取り込みの測定には、C14で標識したイマチニブを用いた。野生型および変異型BCRPのいずれを過剰発現する細胞も、対照に比べて薬物蓄積量が有意に少なく、野生型も変異型も、BCRPタンパク質はイマチニブに対する薬物駆出ポンプとして作用していることがわかった。リアルタイムPCR分析およびウエスタンブロットのデータから、この2種の細胞にはほかのABC薬物駆出タンパク質(MDR1、MRP1およびMRP2)が過剰発現していないことが確認された。

Burgerらはこの相互作用をさらに詳しくみるため、イマチニブのほか、既知の BCRP基質3種(ミトキサントロン、メトトレキセート、ドキソルビシン)、BCRPの野生型または変異型がそれぞれ限定的に標的とする基質2種の駆出をモニタリングした。イマチニブは、ミトキサントロンと同じくBCRPの野生型および変異型のいずれを発現する細胞からも排出された。さらに、BCRP特異的阻害因子の存在下ではイマチニブの駆出が少なく、イマチニブはBCRP の真の基質であることが明らかになった。

イマチニブとミトキサントロンの駆出プロフィールが類似していたことから、イマチニブは競合的基質であることがわかる。実際、Burgerらは、イマチニブがミトキサントロンの駆出を阻害することを明らかにしており、イマチニブとほかの BCRP 基質との併用療法により、両薬物のバイオアベイラビリティーに改善がみられるものと思われるが、細胞内蓄積量の増加により副作用が増大することもありうる。

Burgerらは、BCRPが長期的なイマチニブ服用患者にみられる抵抗性機序に関与している可能性があるとし、今後の併用薬治療プログラムは、複数の薬物抵抗性経路を標的にする必要があることを示している。

doi:10.1038/nrc1514

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