困難を越えて
Nature Reviews Cancer
2004年11月1日
今日、小児癌の女児および若年女性の90%以上が、積極的な化学療法、放射線治療および骨髄移植により治癒可能である。しかし、卵巣は細胞傷害薬による損傷を受けやすく、不妊になることがある。Jacques Donnezらは現在、同所性卵巣組織移植により出産した初めての症例を報告している。
IV期のHodgkinリンパ腫の25歳女性から卵巣組織を採取し、間質組織を除去して、皮質の70試料を凍結保存した。この患者はその後、MOPP/ABV併用化学療法および放射線治療を受けて無病となったが、無月経かつ不妊となった。
6 年後、この患者が妊娠を希望したことから、外科医はまず右卵巣直下の位置に腹窓を設け、新血管の発生および成長を誘導した。卵巣は左右とも萎縮していることが確認された。7日後に再度腹腔鏡検査を実施し、生存原始卵胞が確実に含まれている皮質組織試料の半分を解凍し、すでに血管形成が明白な腹窓へ再移植した。この手技には、悪性腫瘍細胞まで移植されるリスクがあるが、この症例には再移植から5カ月が経過しても癌の証拠は認められなかった。
移植後、黄体形成ホルモンおよび卵胞刺激ホルモン(FSH)の濃度が低下し、卵胞が発達していることが明らかになったが、再び卵巣除去レベルにまで上昇し、卵巣活動の徴候が認められなくなった。4カ月後に3度目の腹腔鏡検査を実施して移植片を点検したところ、萎縮した右卵巣の外側に生存卵胞が認められた。この外科医はさらに、凍結保存していた残りの組織キューブを移植した。その後の4カ月間に、卵胞の発達に続いて黄体の形成が認められ、規則的な月経が戻った。その後、FSHが急増(卵胞が動員されていることを示すものと思われる)してヒト絨毛性性腺刺激ホルモン濃度が上昇し、(自然受精による) 生育可能な妊娠が確認された。2004年9月には、健康な女児が誕生した。
この妊娠の起源が移植組織にあることは、特に右卵巣にはまったく活動が見られず、移植組織にのみ卵胞が認められ、妊娠に至るまでの月経周期の間に、移植部位に排卵前の卵胞が認められていたことによって確証できる。
Donnez らは、癌と診断された女性には必ず、卵巣組織の凍結保存という選択肢を提供する必要があるとしている。もうひとつの選択肢としては、まだ技術的には可能ではないが、原始卵胞を再移植するというものがあり、この方法であれば、悪性腫瘍細胞が体内に戻るリスクは低い。
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doi:10.1038/nrc1484
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