Research Highlights

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Nature Reviews Cancer

2004年11月1日

親油性色素を輸出する能力をもつ正常骨髄においては、幹細胞集団(サイド・ポピュレーション(SP)という)の存在が以前に確認されている。 Charlotte Hirschmann-Jaxらは、親油性抗癌剤を排出する能力をもち、それによって癌の早期再燃に寄与する腫瘍に、同様のサイド・ポピュレーションが存在するかどうかという疑問をもち、治療後再燃した神経芽細胞腫患者23例から得た腫瘍細胞に、このような亜集団があることを確認した。

Hirschmann-Jaxらはまず、蛍光色素Hoechst 3342を用いて排出能の高い細胞集団を分離し、原発性神経芽細胞腫細胞にSPを確認した。正常骨髄では、単核細胞の0.03%がSP細胞である。神経芽細胞腫試料中、SP細胞に分類される生存細胞集団の割合は、1.9% (0.8ミ51%の範囲)であった。

では、こうした細胞には決定的なマーカーがあったのだろうか、また、この細胞の挙動はどうなっていたのだろうか。Hirschmann-Jaxらは、神経マーカーであるガングリオシド(GD2)および幹細胞増殖因子受容体KITが過剰発現していることを突き止めている。このことから、この細胞の表現型は、(神経芽細胞になるか、または成熟して後代細胞になる前の)早期神経冠前駆細胞であることがわかった。Hirschmann-Jaxらは、この所見と一致して、SP亜集団は増殖速度および自己再生能が大きいことを明らかにした。

次に、腫瘍試料をSP細胞とそれ以外の細胞とに分け、ABCトランスポータータンパク質(ABCG2)の発現量を求めた。SP細胞はいずれも、それ以外の細胞に比べ、ABCG2の発現レベルが高かったが、その他のABCトランスポーターであるABCA3およびMDR1の発現レベルに差はなかった。

では、神経芽細胞腫のSP細胞は、親油性抗癌剤の排出能が高いのだろうか。 Hirschmann-Jaxらが、神経芽細胞腫患者5例の細胞にHoechst色素および天然の蛍光剤ミトキサントロンを加えてインキュベートしたところ、Hoechst色素と共にミトキサントロンの排出が増大することが判明した。高濃度ミトキサントロンで処理するとSP細胞の割合が増大し、この細胞集団が選択されていることがわかる。非SP細胞をミトキサントロンで処理してもコロニーは形成されず、SP細胞によって形成されたコロニー数が処置により変化することはなかった。

Hirschmann-Jaxらは、試料を採取した患者が再燃を来していることから、すでにSP細胞集団が選択されていたー新たに診断される神経芽細胞腫におけるSP細胞の割合はかなり小さいー可能性があり、検討の余地があると認めている。この研究では、様々な充実性腫瘍の細胞系について検討しているが、SPは悪性腫瘍の特徴として比較的一般的でありうることもわかっており、抗癌剤治療の重要な標的ではないかと考えられる。

doi:10.1038/nrc1481

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