Research Highlights

エキストラのなかのエキストラ

Nature Reviews Cancer

2004年10月1日

白血病の多くは、発癌融合タンパク質を形成する染色体転座に関連づけられてきた。Anne HagemeijerらはNature Genetics10月号で、ヒトT細胞急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)細胞のエピソームでのみ起こるNUP214とABL1との独特な融合について詳述している。この遺伝子異常は、従来の細胞遺伝学的方法では検知できなかったものであり、ヒト癌に関連するエピソーム融合遺伝子としては初めてのものである。

Hagemeijerらは、T-ALLにおけるチロシンキナーゼABL1の役割を検討するなかで、T-ALL 患者の約6%にABL1の増幅が認められることを突き止めた。興味深いことに、この遺伝子の増幅はいずれも染色体外で起こっていた。ABL1保有エピソームをさらに分析したところ、ほかにもNUP214などの遺伝子が含まれており、こうした遺伝子はいずれも、染色体領域9q34に由来していることが明らかになった。また、この染色体領域が増幅ならびに環状化し、ABL1のC末端とNUP214のN末端とがin-frame融合したエピソームを形成することを発見した。T-ALL患者175例の白血病細胞を検査したところ、10例(6%)にNUP214-ABL1の発現が認められた。

この融合タンパク質は、細胞形質転換にどのように寄与しているのだうか。第一に、このタンパク質にはNUP214のコイルドコイルオリゴマー化モチーフが含まれ、それがこの核膜孔タンパク質のタンパク質間相互作用をメディエートしている。第二に、ABL1のSH3、SH2およびキナーゼドメインが含まれているため、構成的に活性化したチロシンキナーゼとして機能することができる。 Hagemeijerらは、融合タンパク質がT-ALL細胞系3種によっても発現し、ABL1の既知の基質のひとつであるCRKLが、こうした細胞において構成的にリン酸化していることを突き止めた。ただし、ABL1キナーゼ活性を選択的に阻害するイマチニブでこの細胞を処理すると、上記細胞系3種のいずれにおいてもCRKLリン酸化が低下し、このうちの1種は増殖が阻害された。また、イマチニブによるCRKLのリン酸化の阻害は、融合遺伝子を有する患者のうちの1例から単離した初代骨髄細胞でも認められた。

白血病患者の骨髄細胞からは、ほかにも白血病関連変異が検知されている。こうした変異は、腫瘍抑制因子(CDKN2AおよびCDKN2B) の欠失に始まり、転写因子(HOX11)の過剰発現を経て、構成的に活性化したチロシンキナーゼNUP214-ABL1の発現に至るHagemeijer らの多段階T-ALL発生モデルに含まれていた。NUP214-ABL1融合タンパク質の発現が特に攻撃的な疾患過程と関連づけられたことから、白血病患者にとってはイマチニブが重要な新規治療薬となる。Hagemeijerらはさらに、従来の細胞遺伝学的方法では検知されない癌関連遺伝子増幅/欠失を検知するには、高解像度アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションなどのゲノム分析法が重要であると強調している。

doi:10.1038/nrc1464

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