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Nature Reviews Cancer

2004年8月1日

血管内皮細胞増殖因子(VEGF)は、腫瘍血管新生にとって重要であるが、癌細胞そのものがVEGFを発現することが不可欠であるかどうかは不明である。最新のThe EMBO Journalで、腫瘍が間質細胞を動員してこの機能を実行していることが明らかにされている。

Jianying DongとNapoleone FerraraらがVegfヌルマウス胚線維芽細胞(MEFs)を作製したところ、発癌遺伝子Rasの存在下で永久増殖細胞となったのち形質転換した。この細胞をマウスに注入すると、腫瘍を形成し、その大きさは、同じく永久増殖細胞となったのち形質転換した親性VEGF発現細胞系によって形成されたものの約1/2であった。Vegfヌル腫瘍は、親細胞によって形成された腫瘍よりも血管密度が若干低かったものの、不都合なく血管新生を誘発した。

上記の腫瘍はVEGFそのものを発現することはないが、VEGFのmRNAおよびタンパク質は腫瘍に存在していた。ただし、親細胞系によって形成されたものよりもレベルは大幅に低かった。こうした腫瘍に動員される間質細胞は、VEGF発現源となるのだろうか。このことが、VegfヌルMEFでは抹消されるVegf遺伝子のエキソンに特異的なプローブを用いたin situ ハイブリダイゼーションにより確認され、この転写産物が腫瘍関連間質細胞とともに限局していることが明らかになった。

Dongらは、抗VEGF抗体を用い、動員された間質細胞が産生する少量のVEGFが、Vegfヌル腫瘍の血管新生および腫瘍増殖を引き起こしているかどうかを検証した。抗体で処理したところ、腫瘍量が最大で62%に減少し、間質細胞由来のVEGFがまさに重要な役割を果たしていることがわかった。

腫瘍はどのようにして、VEGFを発現する間質細胞を動員するのだろうか。線維芽細胞は腫瘍関連間質細胞の重要な要素であり、VEGFを発見することがわかっている。Dongらは、Vegf-ヌル腫瘍細胞から得られたならし培地が、で線維芽細胞系の遊走および増殖を刺激することを明らかにした。この培地を分画したところ、PDGFA (血小板由来増殖因子ファミリーのなかの1因子)の活性が最大であった。Vegfヌル腫瘍の至るところでPdgfaの発現が認められたことも、線維芽細胞動員におけるこのタンパク質の役割と矛盾しないが、その受容体(PDGFR )をコードするmRNAの発現は、間質細胞に集中していた。さらに、可溶型PDGFR は腫瘍増殖を50%阻害し、この受容体を介してシグナルを伝達するための重要な役割であることを裏付けている。

上記の結果は、血管新生を阻害する抗癌療法にとって重要な意味をもつ。腫瘍細胞が VEGFそのものを産生するほか、VEGF発現線維芽細胞を動員するという事実から、血管新生および腫瘍増殖を完全に遮断するには、この両機序に関与するシグナル伝達経路を遮断する必要があることがわかる。

doi:10.1038/nrc1425

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