免疫療法の急進展
Nature Reviews Cancer
2004年8月1日
腫瘍抗原である癌胎児性抗原(CEA)およびムチン1 (MUC1)に対する免疫応答を刺激する癌ワクチンが、転移性膵癌患者の治療を目的とする第III相臨床試験に入った。
PANVAC -VFというこのワクチンは、Therion Biologics社が開発したものである。ワクチンには、膵癌細胞の90%以上に発現するCEAおよびMUC1を共発現する種痘および鶏痘の組換えウイルスが含まれているほか、抗腫瘍免疫応答を強化・維持するよう、共刺激分子B7.1、ICAM1およびLFAも組み込まれている。
第I相試験で進行性膵癌患者22例(うち20例が転移癌)にPANVAC-VFを接種したところ、生存期間の中央値が7.9カ月、最低でも5.3カ月という結果が得られている。これを歴史対照に基づいた予想全生存期間の中央値約3カ月と比較している。最も一般的な有害事象は注射部位の反応であり、重大な副作用は認められなかった。
第III相多施設無作為化比較対照試験は現在、ゲムシタビンが奏功しなかった進行性膵癌患者250例を対象に実施されている。一次エンドポイントは全生存期間で、姑息的化学療法または最善の支持療法との比較を行っている。この試験はまた、安全性、生活の質 (QOL)、血清中腫瘍抗原濃度の変化、奏功率および疾患の安定化を明らかにしようとするものでもある。
CEAおよびMUC1を標的とする免疫療法はこれまでにも、乳癌、肺癌および大腸癌など、CEAおよびMUC1を過剰発現することがわかっている癌の患者を対象に検討されている。Therion社と米国立癌研究所は現在、こうした癌の患者を対象とするPANVAC-VFの試験をさらに18件計画している。
doi:10.1038/nrc1428
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