幸せな二人
Nature Reviews Cancer
2004年7月1日
p53は腫瘍抑制因子として十分に研究されており、腫瘍の大部分で不活化していることがわかっているが、構造および機能の面で相同なp73については、特に、このタンパク質に癌に起因する機能喪失変異体がないことから、それほどわかっていない。Pier Paolo Pandolfiらは、p73と前骨髄性白血病(PML)遺伝子産物との相互作用が、腫瘍抑制に重要な一面をもつのではないかと報告している。
p73はp53と同じく、細胞の死、増殖停止および分化をコントロールする遺伝子の発現を調節する転写活性化因子である。p53の安定性は、MDM2を介するユビキチン化によって調節されるが、p73の定常状態のレベルを調節する機序は不明である。Pandolfiらは、この分子を検討するなかで、ヒト肺癌細胞ではp73もユビキチン-プロテアソーム経路を経て分解されることを突き止めた。しかし、p53とは異なり、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼp38によりp73がリン酸化すると、p73は分解されない。これはどう作用しているのだろうか。p38によりリン酸化したp73 は、腫瘍抑制因子PMLと相互作用し、ともに核小体へ移動することによってp73がさらに安定する。アセチルトランスフェラーゼp300もPMLとともに核小体に局在することから、Pandolfiらは、p300によるアセチル化によって、p73はユビキチン化することも分解されることもないことを突き止めた。このことから、PMLはp73の重要な安定化因子のようである。
PMLを介するp73安定化は、細胞にどう作用するのだろうか。Pandolfi らは、PMLが過剰発現すると、BAXやWAF1(p21でも知られる)といった遺伝子ターゲットをトランス活性化させてアポトーシスを誘発するp73の能力が増大することを明らかにした。急性前骨髄性白血病(APL)の発生過程で、相互転座によりPMLとレチノイン酸受容体-α(RARα) 遺伝子とが融合すると、PMLがドミナントネガティブ型になる。Pandolfiらは、この融合タンパク質によりPML機能が消失するか、または核小体が崩壊することで、特に、APL芽球におけるp73の安定性および活性が減弱するのではないかとしている。APL患者の治療に用いられるレチノイン酸が、 PML?RAR-α融合タンパク質の分解および核小体の再構築を引き起こすことは以前からわかっているため、さらに実験を重ねてこの薬物がp73も安定化させるかどうかを明らかにする必要がある。
doi:10.1038/nrc1402
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