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得るものと失うもの

Nature Reviews Cancer

2004年6月1日

アポトーシスの抑制は、癌の進行の中核を成し、アポトーシス誘発遺伝子および抗アポトーシス遺伝子が同時に含まれるBCL2ファミリーは、このプロセスの重要なメディエーターである。BIMは、このファミリーのなかでもアポトーシスを誘発する方であり、BCL2の生存機能に拮抗する因子としてきわめて重要である。BCL2は発癌タンパク質であるため、BIMが腫瘍抑制因子であってもおかしくない。理論上、BIMの機能の消失は、 BCL2の機能の獲得に等しい。

Suzanne Coryらは現在、マウスBリンパ球系統にこれが該当すると報告しているが、意外にも、Bimは成熟B細胞においてのみ、腫瘍抑制因子として作用する。Coryらは、リンパ腫傾向にあるB細胞標的(E)-Mycマウスを用いて、Bim遺伝子の破壊が腫瘍発生にどう影響するかを検討した。Bimが(1 アレルでも)消失すると、腫瘍の発生が著しく加速され、早期の新生物はいずれも、表面IgM陽性B細胞の急性白血病であった。ところが、Coryらは当初、同じ系のトランスジェニックBcl2とMyc との組み合わせが、未熟なリンパ骨髄前駆細胞に由来するリンパ腫を誘発するという研究結果を得ていた。

腫瘍発生前に、Bim消失によってBリンパ球系細胞のコンパートメント組成が変化したのには納得できる。E -Myc トランスジェニックマウスは、野生型マウスよりもBリンパ球系細胞がはるかに多く、大半が前駆B細胞である。これに対して、E -Myc Bim欠損マウスは成熟B細胞が圧倒的に多い。Coryらは、B細胞の優先的な増大は、成熟B細胞でMycが誘発するアポトーシスをメディエートする Bimの役割がきわめて重要であることを示すのではないかとしている。前駆B細胞では、Mycがほかのアポトーシス誘発タンパク質をも活性化させているため、Bimの影響は小さいと考えられる。

MycとBimとがB細胞白血病の発生において協力するのはなぜだろうか。Coryらは、Bimタンパク質が、E -Myc導入遺伝子を発現する細胞、特に成熟B細胞に多いこと、Bimアレルをひとつでも不活化すると、細胞がアポトーシスを免れることを突き止めている。結論としては、BimはBリンパ球系細胞でMycが誘発するアポトーシスをメディエートするが、BimがMycの直接の転写標的であることを示す証拠は見つかっていない。

Coryらは以前、Bimのアレルがひとつ消失しても、Bcl2ヌル動物の多くの組織欠損が修復できたことを明らかにしており、BimがBcl2の重要な生理学的拮抗因子であるのは間違いない。しかし、最新のデータでは、Bリンパ球系細胞コンパートメントのBim消失による発癌影響は、Bcl2の獲得ではないことが明らかになっている。この謎が今後解明されれば、Bリンパ球系細胞の分化中に細胞の生死を調節する緻密な回路について、もっと多くのことがわかるはずである。

doi:10.1038/fake842

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