光輝く成功
Nature Reviews Cancer
2004年6月1日
分子標的抗癌剤の多くは、生化学アッセイでは有効であることがわかるが、分子標的にin vivoでどう影響するかを明らかにすることは別問題である。William KaelinらはNature Medicine 6月号で、サイクリン依存性キナーゼCDK2を阻害するようデザインした薬物のin vivo有効性をモニタリングする生物発光法を報告している。
CDK2 は細胞周期の進行を調節するため、抗癌剤の標的になりうる。数多くあるその基質のうち、それがリン酸化するのはサイクリン依存性キナーゼ阻害因子p27 (KIP1でも知られる)である。このリン酸化がユビキチン化につながり、最終的にはp27の蛋白質分解に至る。Kaelinのグループは、p27と生物発光画像法によるin vivoでの追跡が可能な酵素ルシフェラーゼとの融合体を発現するプラスミドベクターを作製した。p27Lucと名づけたこの蛋白質は、p27と同じような挙動をとることから、CDK2活性のマーカーとして用いることができた。
Kaelin らがいくつかの腫瘍細胞系にp27Luc発現ベクターを導入したところ、CDK2を阻害する蛋白質、ペプチド、短い二本鎖のRNA(siRNA)のいずれによってこの細胞を処理しても、そのルシフェラーゼ活性が増大することが確認され、p27Lucはもはや分解されないことがわかった。フラボピリドールや R-ロスコビチンといったCDK2阻害剤でp27 Lucを発現する細胞を処理すると、この細胞系におけるルシフェラーゼ活性は用量依存的に増大したが、単にルシフェラーゼ遺伝子を発現する細胞には作用しなかった。
では、CDK2活性をin vivoでモニタリングするのにこの方法を用いることはできるのだろうか。Kaelinらは、p27Lucを発現する肺癌細胞をヌードマウスの皮下に注入し、6週間後、形成された腫瘍を撮像した。
Kaelin らは、フラボピリドールが異種移植部位でp27Lucを介する発光を誘発すると記載している。この方法の特に有用な特徴は、長時間にわたって何度も測定できることで、これにより、動物を殺処分することなく腫瘍の増殖および進展を解析することができる。以上のことから、ルシフェラーゼレポーターは、CDK2 阻害因子の薬物動態のほか、標的治療をモニタリングするのにも有用となろう。
doi:10.1038/nrc1382
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