Eのすべて
Nature Reviews Cancer
2004年4月1日
CDC4は2001年、サイクリンEを分解のターゲットとするE3ユビキチンリガーゼとして同定された。いくつかの癌細胞系におけるCDC4の変異は、一部の癌でサイクリンEがアップレギュレートしていることから説明がつくが、これが癌細胞で起こるとどうなるのだろうか。Christoph Lengauerらは大腸癌でこのことを調べ、CDC4の消失が染色体不安定を引き起こしていることを明らかにした。
Lengauerらはまず、大腸癌190標本の遺伝子配列を決定し、22標本に体細胞変異が含まれていることを明らかにした。変異は大腸癌の発生から進行まで、あらゆる病期に存在し、そのうえ、10〜20年経過してはじめて悪性化する腺腫58標本のうち4標本にも、CDC4の変異が認められた。すなわち、この異常は腫瘍形成のきわめて早期に起こりうる。なかにはナンセンス突然変異もあるが、いずれもWD40リピート内でタンパク質を切り詰めると予想され、これがサイクリンEとの結合能に影響を及ぼすと考えられる。
それでは、大腸癌細胞で起こるこうした変異の作用とは何であり、腫瘍形成にどのように寄与するのだろうか。サイクリンEはG1?S遷移を調節するため、サイクリンEレベルが増大すると、増殖が促進される。しかし、アップレギュレートされたサイクリンEが染色体不安定性に関与していることを示す研究もある。 Lengauerらは、核型が安定した大腸癌細胞系HCT116およびDLD-1においてCDC4の両対立遺伝子を破壊した。両細胞系ともサイクリンEレベルの上昇を示したが、増殖は正常であった。ただし、異型核(小核など)および多極紡錘体など、ほかの異常を呈した細胞が多かった。こうした表現型は異常分裂と相関しており、31%が正常に分裂しなかった。
いくつかの染色体の動原体プローブを用いたFISH法では、CDC4の両対立遺伝子が消失すると、正常な染色体組からの逸脱、すなわち染色体不安定が頻発することが判明した。Lengauerらは、これが細胞系の種々変異の蓄積ではなく、CDC4の消失に直接起因することを確認するため、RNA干渉法(RNAi)を用いてCDC4の遺伝子発現を一時的にノックダウンした。細胞にはサイクリンEが蓄積され、(CDC4-ヌル表現型のマーカーとして用いた)小核形成が増大した。
サイクリンEのみが CDC4のユビキチンリガーゼ活性の既知の基質であるということは、サイクリンEのアップレギュレーションは、CDC4- ヌル表現型に必要かつ十分な条件なのだろうか。CDC4存在下でサイクリンEが過剰発現すると小核形成が増大し、CDC4不在下でRNAiによってそれをノックダウンすると小核形成が妨げられることから、サイクリンEはCDC4作用の単独のメディエータであることが裏付けられる。
CDC4の消失は染色体不安定を引き起こし、腫瘍形成の初期段階で変異することから、以上の研究結果は、CDC4の消失が腫瘍形成の原因となりうることを裏付けている。
doi:10.1038/nrc1327
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