Research Highlights

円柱腫形成:原因と治療法

Nature Reviews Cancer

2003年10月1日

円柱腫は皮膚付属器の珍しい腫瘍であり、癌抑制遺伝子CYLDの変異が原因で起こる。しかし、この遺伝子の機能はつい最近決定されたばかりだ。Nature誌に発表された3つの論文によると、CYLDはNF-κB活性を抑制する脱ユビキチン化酵素である。

 最初にCYLDとNF-κB経路を関連づけるのに、研究グループは異なる方法をとった。TrompoukiらとKovalenkoらはどちらもIKK複合体のIκBキナーゼ‐γ(IKKγ)サブユニット(図参照)で酵母ツーハイブリッドスクリーニングを行い、CYLDを選び出した。次に、哺乳類細胞で生体内の相互作用が起こることを免疫共沈降実験で確認した。KovalenkoらはCYLDがNF-κB経路の別の構成要素であるTRAF2とも相互作用することを証明した。

 Brummelkampらはこれと違って、脱ユビキチン化を行うと推定される酵素群の発現をRNA干渉(RNAi)で遮断してスクリーニングし、CYLD喪失によりNF-κBにルシフェラーゼをリポーターとして連結した構築物の発現が増加することを発見した。同様の干渉を細胞で行うと、IKKβ活性のTNF誘導刺激応答が増強され、その後IκBα濃度が減少した。Trompoukiら、Kovalenkoらは CYLDとNF-κB経路の関連をさらに解析した。Trompoukiらは、野生型CYLDがTNF受容体のNF-κB活性化機能を阻害するが、変異型 CYLDでは阻害せず、CYLDをRNAi遮断するとCD40リガンドに応じたNF-κBの活性化が増強することを発見した。Kovalenkoらは CYLDの過剰発現により、TNFやIL-1リガンドによるNF-κB誘導が阻害されるが、触媒活性のないCYLDでは阻害されないことを明らかにした。

 次の段階はCYLDがNF-κB経路にどうやってそのような影響を及ぼすのかを同定することだ。 CYLDは以前に脱ユビキチン化酵素としての作用が提案されており、Trompoukiらは野生型と癌関連変異型CYLDを発現させ、野生型のみがテトラユビキチンを切断できることを示した。それではNF-κB経路におけるCYLDの脱ユビキチン化活性の標的は何だろうか。

 NF-κB活性を誘導するTRAF2とTRAF6の能力は、自己ユビキチン化に依存する。 Kovalenkoらは、TRAF2とTRAF6、IKKγがすべてポリユビキチン化されており、CYLDと共発現するとこれらのポリユビキチン化型が消失することを示した。同様に、 TrompoukiらとBrummelkampらもTRAF2と野生型CYLDの共発現によりTRAF2ポリユビキチン化が減少することを明らかにした。興味深いことに、CYLD変異体の発現でTRAF2のユビキチン化は背景濃度より増加した。

 Brummelkampらは、CYLDの癌抑制活性がNF-κBの抗アポトーシス活性を阻害する能力に関係すると提案している。CYLDがRNAiで枯渇すると、細胞がアポトーシス刺激を切り抜け生き残る能力が増加する。これらの結果は、円柱腫の治療に興味深い可能性を示唆する。CYLD喪失がNF-κB活性を増加するならば、アスピリンやその他の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)のようにIKKβを阻害する薬はこの影響を中和するかもしれ ない。円柱腫にアスピリン誘導体を局所塗布し、これを調べる臨床試験が始まったところである。

doi:10.1038/nrc1202

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