切って切って切りまくる
Nature Reviews Cancer
2002年9月1日
カスパーゼファミリーのプロテアーゼの活性は、カスパーゼ非依存性の代替経路が存 在する証拠があるとはいえ、プログラム細胞死の中核である。アポトーシスの間、多 くのタンパク質がカスパーゼによって切断されるが、細胞死には実際これらの切断が どのくらい必要なのだろうか。細胞死に関与しない切断はどれくらいなのだろうか。 Jean WangらによりNature Cell Biologyに発表されたすばらしい研究で、あ る組織では、細胞死を刺激する信号に応答して、細胞周期調節因子であるRbの切断が アポトーシスに必要であることが明らかにされている。
胞周期調節因子Rbはアポトーシスの間、カスパーゼによって切断される。切断産物 は不安定なので結果的にRbの発現は失われる。Rbノックアウトマウスは異所 的アポトーシスを示し、Rb欠失マウス由来の繊維芽細胞は、DNA損傷や腫瘍壊 死因子α(TNF-α)で誘導されるアポトーシスに過敏になる。しかし、細胞死はRB欠 失細胞が細胞周期を停止する能力がないことによるのだろうか。Rbは細胞周期進行の 制御とは別に、アポトーシスを阻害する特異的な機能をもつのだろうか。
の問題に取り組むため、WangらはマウスRb-1遺伝子のカスパーゼ切断部位 に生殖系列変異を導入したRb-MIマウスを作出した(MIはIce 部位の変異を示す)。彼らは、Rbのカスパーゼ抵抗性変異体の発現が、TNF-α誘導性 の細胞死から細胞を保護するようになることを見いだした。これは以前のトランスフェ クションされた繊維芽細胞での結果と矛盾しない。もっと驚くことには、Rb 欠失マウスとは対照的に、Rb-MIマウスは野生型マウスと同じくらい放射線誘 導性アポトーシスに感受性を示した。RB変異のこの刺激特異的効果に加えて、Wangら は細胞種特異的な効果についても注目した。野生型マウスを細菌リポ多糖(LPS)処 理すると内毒素ショックを起こし、腸や脾臓の大量細胞死を示す。Rb-MI変異 はLPS誘導性細胞死から腸細胞を保護するが脾細胞は保護せず、また雌ではなく雄マ ウスのみが生存できる。
スパーゼ切断を減じたRbの選択的な効果は、Rb-MIによるカスパーゼの非特異的阻 害とは反対の結論を示唆し、それどころかRbの切断と分解は細胞死情報伝達の選択的 経路に必要なことを示す。しかし、この研究はアポトーシスを選択的に制御するRbの 機構に関する問題も明るみに出している。
bは細胞死を制御する遺伝子群の発現を抑制することが報告されている。しかし、 TNF-αによる細胞死では新しい遺伝子発現は必要ないので、この結果はアポトーシス に関するRbの機能は転写に無関係でありうることを示唆している。
doi:10.1038/fake852
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