Research Highlights

一歩接近

Nature Reviews Cancer

2002年10月1日

毛細血管拡張性運動失調症はATMの同型接合性変異によりひき起こされる疾患 で、放射線感受性やゲノムの不安定性、癌の素因と、長い間関連づけられている。し かし、異型接合性の個体もまた、これらの性質を共有しているのだろうか。Martin LavinらはNature Genetics 9月号で、マウスモデルを用いてこの問題を調べ、 答えに一歩近づいたと報告している。

TMミスセンス変異の7636del9は、アミノ酸3つが欠失する遺伝コードの読 み枠がずれない変異であり、毛細血管拡張性運動失調症の個体で同定された。マウス の対応する同型接合性変異(Atm-ΔSRI)でも、腫瘍の発生率が増加する。

れではAtm-ΔSRIの異型接合性のマウスではどうだろうか。これらもまた、 野生型同腹仔マウスの腫瘍形成が2.8%なのに対し8.9%と、増加を示した。また腫瘍ス ペクトルは、この変異の同型接合マウスに見いだされたものと似ていたが、同一では ない。この変異を異型接合性にもつヒトの腫瘍発生率を分析したところ、わずかな増 加を示すことが明らかになった。しかし、これは統計的に有意でない。これらの人々 は代わりに、毛細血管拡張性運動失調症の何かほかの特徴を示している可能性がある のだろうか。

型接合性のヒトおよびマウス細胞が単離され、放射線被曝後の生存性とゲノム不安 定性が検査された。放射線誘導性細胞死のレベルと染色体異常数は、野生型細胞と同 型接合性変異細胞の中間であった。

TMプロテインキナーゼは、p53のようなタンパク質をリン酸化し活性化することで、 DNA損傷から細胞を保護する。それでは、この能力はAtm-ΔSRI変異体では損 なわれているのか。野生型DNAあるいはAtm-ΔSRI DNAを対照となるリンパ芽 球腫細胞に導入し、免疫沈降したATMのキナーゼアッセイをp53を基質にして行った。

SRI変異体を導入した細胞ではキナーゼ活性がなくなり、これが野生型タンパク質 の優性阻害型インヒビターとして働くことが示された。これは、Atm欠失に対 し異型接合性のマウスでは癌発生率が増加しないという発見を支持するものであり、 Atm変異体の異型接合型キャリアの癌発症傾向は、関連した特異的な変異に決 定的に依存するらしいことを示している。

まくいけば、ほかのAtm変異体キャリアが示す癌の危険性はまもなく正確に 決定され、推奨されるあらゆる予防措置を受けられるだろう。

doi:10.1038/nrc916

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