第二の経路?
Nature Reviews Cancer
2002年11月1日
テロメラーゼとALTは、不死化に対し同等のかかわりをもつのだろうか。これは、 Proceedings of the National Academy of Sciences 10月1日号の論文 でRobert Weinbergらが取り上げた問題である。どちらの経路でも結果的に染色体末 端にテロメア配列が付加され、危機を予防し細胞の無限増殖が可能となる。しかし、 ALTは予想されていたほど頻繁には起こりにくいようである。
ロメラーゼの触媒サブユニットであるTERTによって不死化された細胞は、腫瘍性タ ンパク質HRAS-V12を加えることによって非腫瘍原性から腫瘍原性状態へ転換できる。 ではALTによる不死化細胞でも同じことがあてはまるだろうか。GM847細胞系列はテロ メラーゼ活性がなく、ALTによってその長いテロメアを維持している。しかし、 HRAS-V12を加えても、免疫不全マウスに注入すると腫瘍形成を誘導できる細胞は生じ なかった。TERTも導入するとこの腫瘍形成誘導能は回復した。
は、テロメラーゼはALTによる細胞のテロメア維持機構を代替できるのだろうか。 HRAS-V12とTERTを導入したGM847細胞はAA-PMLボディ(ALT細胞のマーカー)を変わら ず含んでいる。これは、TRF2とPMLという特徴的なタンパク質を含んでおり、TERTが 発現していようともALTが活性なままであることを示している。
味深いことに、テロメラーゼのもつテロメア伸長能力は腫瘍原性表現型に必要です らない。カルボキシル末端をHAで標識したTERTをHRAS-V12とともにGM847細胞に導入 した場合も、腫瘍形成能を授けることが可能である。この標識TERTは生体外でテロメ ラーゼ活性をもつが生体内ではテロメアを伸長できない。
れではこれらの細胞でTERTはどのような付加的な役割を果しているのだろうか。正 常な組織培養条件は、TERTの共発現の有無にかかわらず、HRAS-V12を導入したGM847 細胞の増殖速度は同じだった。しかし、栄養と酸素レベルを制限した培養条件に変え ると、TERTの発現は結果的に増殖速度の増加につながった。
たがって、ALTがテロメラーゼよりもテロメアを長く伸ばせるという事実にもかか わらず、ALTとテロメラーゼは機能的に等価ではない。おそらくALTが癌において予想 よりも低いレベルで起こる理由は、テロメラーゼの再活性化に比べ、細胞が同等な増 殖優位性を得られ腫瘍原性をもつようになる前に、さらなる変異が必要なためである。
doi:10.1038/nrc935
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