Research Highlights

治療法 / 診断法 / 免疫療法

Nature Reviews Cancer

2002年12月1日

治療法

害作用をもつ合成低分子RNA:効率よく発癌性変異を不活性化し、p53経路を回復させる道具

artinez, L. A. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99, 14849-14854(2002)

RNA干渉法という技術がさかんに利用されるようになり、狙った遺伝子だけを破壊する遺伝子機能ノックアウトを創り出してさまざまな研究が進められている。ところで、この技術を医療現場に移し、癌患者の治療に使えるのだろうか。Martinezらは、干渉作用をもち、野生型p53と点変異を起こした p53を区別することができる短いRNAを作製した。これらの干渉性RNAを利用して、野生型と変異型の両方のp53タンパク質を発現する腫瘍細胞中の変異型p53タンパク質を選択的に検出することができ、一人一人の患者にぴったり合うテーラーメード治療の基礎がつくられるだろう。

診断法

立腺癌を検出する血清プロテオーム解析パターン

etricoin, E. F. et al. J. Natl. Cancer Inst. 94, 1576-1578 (2002)

現在、前立腺特異的抗原の発現量が増加している男性が前立腺癌かどうかを確認するには、診断検査のために患者から生体組織を採取しなければならない。 Petricoinらは、前立腺癌患者と、良性腫瘍患者または病気ではない人を区別できる生命情報科学アルゴリズムを開発した。血清のプロテオーム解析パターンから、前立腺癌患者の95%と良性腫瘍患者の78%が正確に予測された。

免疫療法

重の特異性をもつT細胞は増殖性と抗腫瘍活性を兼ね備えている

ershaw, M. H., Westwood, J. A., & Hwu, P. Nature Biotech. 20, 1221-1227 (2002)

抗腫瘍免疫にはT細胞の活性化が必要だが、腫瘍抗原は一般に免疫原性に乏しい。生体内で腫瘍反応性T細胞を拡張するため、Kershawらは二重の特異性をもつT細胞を作出した。このT細胞は、免疫原に応答することができるだけでなく、卵巣癌に関係がある葉酸結合タンパク質(FBP)という抗原を識別することもできる。二重特異性をもつマウスT細胞は、試験管内で同種抗原とFBP発現性腫瘍細胞の両方に応答し、生体内で同種細胞による免疫感作に応答して拡張した。二重特異性をもつヒトT細胞も作出された。

治療法

ーハイブリッド法で同定されたRas/Raf-1相互作用の阻害物質はヒト癌細胞のRas依存性形質転換表現型を復帰させる

ato-Stankiewicz, J. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99, 14398-14403(2002)

RASおよびRAFタンパク質を通して作用する情報伝達カスケードは、かなりの数の腫瘍で活性化されているので、RASとRAFの相互作用の阻害は治療戦略になる可能性がある。この相互作用を阻害する数種の低分子量化合物が、2種の融合タンパク質(two-hybrid)間の相互作用を検出するツーハイブリッド法を用いて同定された。これらの化合物は、分裂促進因子活性化プロテインキナーゼ経路の活性化を阻止し、種々の種類の細胞において形態への影響、浸潤性、足場非依存性増殖など、RAS遺伝子によって形質転換された表現型のいくつかを復帰させた。

doi:10.1038/nrc959

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