Research Highlights

分子擬態

Nature Reviews Cancer

2002年12月1日

BRCA2遺伝子の生殖細胞変異は、乳癌、卵巣癌の発症率を高める。細胞におけるBRCA2の役割を理解しようと非常に多くの研究がなされている。BRCA2は、組換 えDNA修復にかかわるタンパク質RAD51と結合し、かつその機能を調節することが知られている。しかし、この結合は機能面で何を意味するのだろうか。

om BlundellとAshok Venkitaramanらは今回、RAD51のBRCA2依存性調節の構造的基盤を明らかにしたことをNatureに報告した。彼らはBRCA2のBRCリピート4(BRC4) とRAD51のRecA相同ドメインからなる複合体の1.7Å結晶構造について述べ、BRCリピートがRAD51に見られる保存されたモチーフによく似ており、そのためBRCA2がRAD51活 性を調節できることを明らかにした。

乳類細胞がDNA損傷にさらされると、RAD51は損傷したDNAの末端にオリゴマー形成し、続く組換えDNA修復段階に必須の核タンパク質繊維を形成する。その経緯を解明するため、BRC4-RAD51の構造と、細菌におけるRAD51相同体であるRecAの比較が行われた。RecAもらせん状繊維である。その結果、 BRC4の保存された配列モチーフが、 RecA繊維のサブユニット間の接触面に見られる7アミノ酸配列に構造上よく似ていることが発見された。この情報をもとに、RAD51が同じモチーフによってオリゴマーを形成することが明らかにされた。このモチーフは、細菌からヒトに至るまでRecA様分子群において保存されており、そのような核タンパク質繊維の形成が構造的に共通した機構によることを強く示唆している。

RCA2は8個のいわゆるBRCリピート(BRC1〜8)のうち6個を介してRAD51に結合する。 BRC4-RAD51複合体の構造から、これらのBRCリピートは、核タンパク質繊維中のRAD51 サブユニット間の接触面を形成する天然のRAD51モチーフに似ていることが示されて いる。すなわち、BRCA2はRAD51の構造をコピーして、RAD51のオリゴマー形成状態を 制御しているのである。

の研究から、癌におけるBRCA2の役割について何かわかるのだろうか。

RCA2のもついくつかの点変異は、癌との関連性がわかっているものである。 著者らが明らかにしたところによるとこの点変異により、BRCA2のRAD51への結合能が 損なわれるため、RAD51は損傷DNAを修復できないと思われる。このことで癌の進行を 説明できる。この相互作用の重要性は、BRCA2-RAD51接触面を、抗癌剤となりうる低 分子阻害物質開発の標的にできることも意味している点にある。

doi:10.1038/nrc956

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