VHLによる安定化の影響
Nature Reviews Cancer
2003年1月1日
フォンヒッペル・リンドウ病の癌抑制遺伝子
VHL)の不活性化は、ヒトでは、腎臓、網膜、中枢神経系、副腎の各部位における癌を含む数種の異なる腫瘍型の発生に結びつけられている。遺伝子は10年ほど前に同定されているにもかかわらず、VHLが細胞内の機能や、その変異がきっかけとなる腫瘍の発生についてはわかり始めたばかりである。KrekらはNature Cell Biology1月号でVHLの新たな機能、すなわち微小管の安定化を明らかにし、この機能を破壊すると特異的な亜型VHL病が発生することを示した。
れまでは、VHLはE3ユビキチンリガーゼ複合体の構成要素としての機能が最も知られていた。この複合体は常圧下で低酸素誘導因子(HIF)の分解を仲介する。これと亜型VHL病の間には多少関連があるが、VHLのこの機能が癌の進行にどの程度寄与しているのかは不明である。さらに最近、VHLが細胞外マトリックスの形成と細胞周期の進行にも関連することが示されている。
rekらの新しい研究の重要性は、VHLのイソ型に特異的な新たな細胞骨格機能を同定した点である。このイソ型はこれまでVHL腫瘍発生との関連は示されていなかった。 VHLには2つのイソ型、長いVHL30と、内部のメチオニン54から開始する短い
HL19がある。Krekらは各イソ型特異抗体を用いて、短いイソ型は核におもに局在し、長いVHL30イソ型は細胞質微小管網と共存して、それには完全な微小管網が必要なことを明らかにした。
の局在化の機能的な意義に的を絞り、VHLの結合が微小管の動態に及ぼす影響を調べ、VHLがノコダゾール処理から微小管を保護し、安定化することを発見した。1つの重要な特徴は、VHLのこの機能が、活性なE3リガーゼ複合体形成能とは別個のものらしいことである。それでは、この役割とVHLの癌抑制機能に関連性があるとすれば何であろうか。Krekらは、微小管の安定性に関する病気の各型に結びついたさまざまな
HL変異の効果に注目した。興味深いことに、2A型VHL病(および2C型病)に結びついた変異のみが微小管の安定性を失っていた。この型は副腎癌と小脳血管芽腫を発生する危険性が高い。
HLのこの機能が癌の発生にどのように寄与するかは依然調べられているところであるが、この研究からVHL機能の新たなモデルが現れ始めている。 Krekらは、2つのイソ型は別の役割をもつと提案している。短いイソ型は核内に存在し、E3リガーゼ複合体の一部としてHIFを常圧下で制御するのに必要である。一方長いイソ型は、細胞質内でE3に依存しない新しい機能をもち、微小管の安定性にかかわる。VHLによる微小管の安定性が失われた場合、癌の進行の一因となるかは正確には今後の検討課題である。
doi:10.1038/nrc976
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