癌につながるアダプタータンパク質
Nature Reviews Cancer
2003年1月1日
アダプタータンパク質は、情報伝達経路においてタンパク質間あるいはタンパク質‐脂質間の相互作用を仲介する柔軟な分子足場としておもに機能する。AlexandraFlemmingらはNature Immunology誌で、B細胞の分化過程で発現されるアダプタータンパク質SLP65が、前駆B細胞の増殖を制限して成熟細胞への分化を促進し、腫瘍を抑制すると述べている。
細胞分化は、プロB細胞から前駆B細胞(プレB細胞)、成熟細胞へと段階的に起こる。プレB細胞発生の重要なチェックポイントは、プレB細胞受容体(プレBCR)の細胞表面における発現である。プレBCRはこれらの細胞の選択と増殖の情報伝達に必要とされる。そのあと細胞は分化してプレBCRを失い、 BCRを発現し成熟細胞となる。Slp65アダプター欠損マウスでは、正常よりプレB細胞が多く、成熟B細胞が少ないことが知られていた。このことからプレB細胞に果たすSLP65の役割のヒントを得て、Flemmingらはこの研究に着手した。
ず最初に野生型マウとSlp65-/-マウスの骨髄からプレB細胞が単離され、これをインターロイキン7(IL-7)存在下で試験管内で短期間増殖させた。この結果、変異体細胞は野生型細胞より強い増殖能をもち、大部分がプレBCRを発現することがわかった。実際、Slp65は通常プレBCRの表面発現を抑制することも示されている。プレBCR の機能の1つは増殖信号の伝達なので、変異体細胞はそれなしに増殖できるのだろうか。Slp65-/-マウスとプレBCRの一部分を欠損したマウスを交配させると、単離した骨髄由来B細胞は増殖が遅いことが確かめられた。したがってSlp65-/-B細胞増殖を高めるには、プレBCRが表面で高発現することが必要である。
lemmingらは次に、Slp65-/-プレB細胞をもっと長期間培養し、増殖に必要な分裂促進因子活性化プロテインキナーゼ(MAPキナーゼ)ERKを含む情報伝達経路が活性化することを明らかにした。さらに、IL-7を取り去ると生型細胞のように分化が始まったが、Slp65を加えると分化が著しく強まった。
lp65-/-マウスには少数ではあるが有意の割合で固形腫瘍が発生した。そのほとんどは肩甲骨近傍の脾腫であり、これらの腫瘍はすべてプレBCR発現プレB細胞のみからなる。培養された変異型プレB細胞で見られた増殖の亢進が腫瘍のこの増
doi:10.1038/nrc977
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