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1.抗癌剤:単独およびハーセプチンFabとの複合体におけるHER2の細胞外領域の構造 2.β‐ラパコン(β-lapachone)による癌細胞の選択的破壊:チェックポイント機構の直接的活性化

Nature Reviews Cancer

2003年4月1日

1. 抗癌剤

独およびハーセプチンFabとの複合体におけるHER2の細胞外領域の構造

ho, H.-S. et al. Nature 421, 756-760(2003)

HER2受容体型チロシンキナーゼの過剰発現は、乳癌症例の20〜30%に見られる。トラスツズマブ(商品名ハーセプチン;ジェネンテック社)という HER2に対するモノクローナル抗体がHER2過剰発現乳癌患者の治療薬として認可されている。ハーセプチンの抗原結合断片(Fabフラグメント)と複合体を形成したヒトHER2の結晶構造がChoらによって報告された。この結晶構造から、HER2受容体の特定領域が治療効果の高い薬剤の開発に有望な標的になりうることが明らかになった。

1. β‐ラパコン(β-lapachone)による癌細胞の選択的破壊

ェックポイント機構の直接的活性化

i, Y. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100, 2674-2678(2003)

細胞増殖の周期にはチェックポイントが組み込まれていて、DNA損傷が修復できない場合にはチェックポイントでアポトーシスが活性化され、ゲノムの完全性が守られるようになっている。従来の抗癌剤の多くはDNAの非選択的損傷を引き起こして癌細胞を破壊し、チェックポイント機構を媒介としたアポトーシスの活性化をもたらすが、それゆえに正常細胞にも毒性を示す。Liらが報告しているところによれば、β‐ラパコンはチェックポイント機構の活性化をアポトーシスに結びつける調節経路を介して癌細胞のアポトーシスを選択的に誘導することができる。したがって、チェックポイント機構の直接的活性化は新しい抗癌戦略になりうると考えられる。

doi:10.1038/fake864

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