免疫療法 / 発癌 / 標的の発見 / 前立腺癌
Nature Reviews Cancer
2003年5月1日
定着性Her-2/neu癌腫の消滅における抗体、サイトカイン類、およびパーフォリンの重複しない役割 Curcio, C. et al. J. Clin. Invest. 111, 1161-1170(2003) ERBB2(別名HER2/neu)タンパク質をつくらせるDNAワクチンは、マウスの定着性乳癌 の免疫拒絶反応を刺激することが示されている。Curcioらはこの免疫拒絶反応の機構 を解析し、免疫療法を成功させるにはCD4陽性およびCD8陽性T細胞、CD1d拘束性ナチュ ラルキラーT細胞、好中球、マクロファージ、抗体、Fc受容体、インターフェロン‐ γおよびパーフォリンの作用が必要なことを示した。
発癌
D4陽性T細胞による皮膚発癌の免疫促進
aniel, D. et al. J. Exp. Med. 197, 1017-1028(2003)
Danielらは、K14-HPV16マウスの上皮癌発生過程における免疫応答を調べた。炎症前に作用するCD4陽性T細胞が腫瘍に浸透することがわかったが、これらのT細胞は癌細胞よりもむしろ皮膚形成異常を伴う細菌感染を攻撃の標的にした。驚いたことに、その後に起こった炎症応答は上皮癌発生を促進した。CD4陽性T細胞をもたないマウスでは新生物形成の進行が遅く、腫瘍の発生頻度が低いことがわかったので、炎症応答は新生物形成の進行を促進する場合があると考えられた。
標的の発見
形腫瘍の薬剤療法の標的になるダウン症候群決定遺伝子座SIM2-s遺伝子の同定
eYoung, M. P. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100, 4760-4765(2003)
集積データ解析法とアンチセンス法を組み合わせることにより、DeYoungらは21番染 色体のダウン症候群決定領域に見いだされる短いSingle Minded 2 (SIM2-s)遺伝子がある種の固形腫瘍で発現されていることを示した。アンチセンスSIM2-sは試験管内で増殖阻害とアポトーシスを引き起こし、生体内では腫瘍増殖の阻害を引き起こした。DeYoungらの研究結果は、固形腫瘍の診断と治療に重大な影響を及ぼすとともに、ダウン症候群患者が癌にかかる危険性を理解する助けになるかもしれない。
前立腺癌
化に伴う前立腺DNAの癌関連変化および原発性前立腺腫瘍の転移の早期確認
alins, D. C. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 15c Apr 2003
Malinsらは、組織学的に正常な前立腺組織のDNAが年齢に伴って変化することを示した。高齢層(55〜80歳)の男性の42%に、原発性前立腺腫瘍由来組織のDNAに類似した構造変化が見られる。これらの変化は、加齢に関連したDNA損傷によって引き起こされる。重要なのは、転移が確認された原発性前立腺腫瘍をこの解析法によって90%の感度と診断特異性で見分けられることだ。この手法は、前立腺癌にかかる危険性がある男性とすでに前立腺癌がある患者の転移の可能性を確認するのに役立つかもしれない。
doi:10.1038/nrc1086a
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