ホルモンの欠乏がもたらす発症!2003年1月29日
Nature Reviews Cancer
2003年6月1日
エストロゲンが欠乏すると、免疫系が抑制的に調節されることが知られ、自己免疫疾患の発症を引き起こすおそれがある。体内のエストロゲン濃度は当然ながら女性のほうが高いので、エストロゲンの欠乏の影響は男性よりも女性のほうが顕著に現れる。さらに、エストロゲン濃度は年をとると自然に低下するので、加齢に伴って欠乏の影響が増加すると考えられる。エストロゲン受容体αおよびβ(ERα、 ERβと略す)は、両方とも免疫系の調節に関与するとされている。今回、ShimらがProceedings of the National Academy of Sciences誌に報告したところによると、Er β-/-マウスでは実際に加齢が免疫系に顕著な影響を及ぼし、ヒトの慢性骨髄性白血病(CML)の後期のリンパ性急性転換に似た骨髄増殖性疾患が引き起こされる。
後1年半までに、Erβ-/-マウスの脾臓は著しく肥大し、特に雌の脾臓肥大が顕著だった。骨髄の過形成も観察され、これが脾臓肥大の原因と考えられた。おもに果粒球やBリンパ球の一部などの白血球の肝臓や肺への浸潤も高比率で見られ、骨髄増殖性が特徴の症候群だとわかった。
rβ-/-マウスの血液を調べたところ、好中球と単球の数が増加し、一部のマウスにはリンパ性急性転換の証拠があった。さらに流動細胞計測法によって骨髄細胞を解析したところ、果粒球の全体数が15〜30%増加していることが明らかになった。
himらの研究結果から、Erβ-/-マウスは、加齢に伴って骨髄増殖性疾患を発症すると考えられた。Erβ遺伝子がヘテロ接合性のマウスも骨髄増殖性症候群を発症したので、正常な造血が可能なのは、Erβ遺伝子の2つの対立遺伝子が両方とも存在する場合だけである。したがって、ヒトの場合もER β遺伝子の変異がCMLなどの骨髄増殖性疾患を引き起こす原因になる可能性があるが、これについてはさらに研究を進める必要がある。骨髄増殖性疾患の治療には、 ERβに結合して受容体の構造変化をもたらすアゴニスト(作動薬)が有効かもしれない。
doi:10.1038/nrc1107
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