肺癌の性格分析
Nature Reviews Cancer
2002年8月1日
進行性非小細胞肺癌の症状を現す患者の前途はつらい。全体として10年生存率は8〜 10%である。病気の第I期を現す患者の25〜30%は、外科処置の後5年以内に再発する。 しかし今回、Nature Medicineの8月号でDavid Beerほかが、第I期患者のうち 再発の危険の高いものを遺伝子発現プロファイリングによって同定できると報告して いる。この情報は、治療計画を立てるうえで価値があるに違いない。
eerらは、肺腺癌患者の遺伝子発現プロファイルと臨床所見の相関を調べ、第I期患 者の生存を予測する特定の遺伝子発現パターンを同定した。
伝子発現プロファイルは、86の原発性肺腺癌と腫瘍のない肺試料10件から得てお り、4966の遺伝子が同定された。階層的クラスタリング法を用い、3つの腫瘍集団が 明らかにされ、個々の集団は腫瘍の段階や分類に関して明確な差異を示した。予想さ れたとおり、分化の特徴が類似する腫瘍は同様の遺伝子発現を示し、段階の進んだ多 くの腫瘍は第3集団に位置づけられることが示された。段階の進んだ腫瘍はほとんど 分化しておらず、低い生存率と相関を示す。意外にも、第I期の腫瘍であっても同じ く第3集団に位置づけられた。
査した4966遺伝子のうち967は、第I期と第III期の腺癌ではっきり異なっていた。 Beerらはマイクロアレイ解析から得た発現データの信頼度を、それぞれから選んだ 3つの遺伝子のノザンブロット法と免疫組織化学法によって裏づけた。しかし最重要 問題は、この発現データが生存と関連づけできるかどうかだ。
想どおり生存曲線は、第III期腺癌は第I期腺癌に比べて明らかに生存率が低いこと を示している。危険度指標(肺腺癌の試料群から決定された患者の生存に関係する 50遺伝子の発現に基づいている)は、独立した患者の試験集団に危険性の高い第I期 患者群を同定し、生存率を予測した。重要なのは、この危険度指標が第I期肺腺癌の まったく独立した62例について生存を予測することが示された点である。
者の生存に関係する遺伝子に基づく発現遺伝子危険性プロファイルは、第I期肺腺 癌を同定できるうえ、この集団内で再発や転移といった危険性が高いか低いかを区別 できると、Beerらは示している。第I期肺腺癌の患者で再発の危険の高いものを同定 できれば、生存の可能性を高める可能性のある補助的治療を考慮する余地が生じるは ずだ。
doi:10.1038/nrc872
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