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次に控えるのは?

Nature Reviews Cancer

2002年8月1日

慢性骨髄性白血病は、BCR-ABLチロシンキナーゼの異常活性により引き起こされる。 その治療においてキナーぜ阻害剤イマチニブ(Glivec)が成功を収め、他の分子標的 治療を開発する刺激となっている。Cancer Cell誌の2つの報告が示すよう に、FLT3キナーぜは急性骨髄性白血病(AML)患者の約30%で変異しており、その阻害 剤はこの病気の標的治療の有力候補となる。

つめの研究はキナーぜ阻害剤CT53518を扱っている。これは生体外でFLT3および他の 2つのキナーぜ(血小板由来増殖因子受容体[PDGFR]とKIT)に、選択的に働く。 CT53518は何種類かの構成的に活性をもつFLT3変異体(AML患者からクローニ ングされ、Ba/F3細胞で発現)を阻害し、またFLT3変異をもつヒトAML細胞系 にアポトーシス性細胞死を誘導することが見いだされた。Kellyらはこれらの観察を 重要視し、変異FLT3仲介AMLの2つのマウスモデル系でCT53518について生体内で調べ た。脾臓重量、白血球(WBC)数を指標として調べたところ、病気の進行において CT53518は著しく減少し、生存するものでは増加することを見いだした。さらに CT53518は、臨床使用に適した薬物動力学と毒性をもつことが示された。

つめの研究はWeisbergらによるもので、キナーぜ阻害剤PKC412(FLT3を標的とする ほか、キナーぜKDR、PDGFR、KIT、プロテインキナーゼCも標的とする)の活性を評価 し、AML患者由来の変異FLT3受容体を発現したBa/F3細胞に高い毒性を示すことを見い だした。そして変異FLT3仲介白血病のマウスモデルでは、PKC412処理は白血病の進行 を完全に阻止した。一方、偽薬処理集団のマウスはすべて致死的な病気進行を示し た。さらに処理マウスでは脾臓重量とWBC数も著しく低下した。

れらの研究はいずれも、FLT3がAMLの有効な薬剤標的として有力であるという考え を強く支持している。PKC412およびCT53518は現在、AML薬としての臨床試験中であ り、いくつかの他のFLT3阻害剤についても臨床試験が行われるようだ。FLT3以外の標 的も個々に異なるらしく、それによる各薬剤の影響もあるようで、その効果と毒性の 比較に大きな興味がもたれる。

doi:10.1038/fake873

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