Research Highlights

癌細胞の指紋をとる

Nature Reviews Cancer

2002年8月1日

前立腺特異的抗原(PSA)スクリーニング検査は1990年代初めに医療現場で実用化さ れ、前立腺癌の発見が増大し、患者の処置が改良された。しかし、この検査の感度に もかかわらず、PSAは前立腺癌の血清マーカーとしての特異性を欠いている。したが って、特異性の高い生体マーカーを見つけてこの疾患の早期発見を向上する必要性が 最重要である。最近の技術進歩によりこれが可能になった。Cancer Research 7月1日号にGeorge L. Wrightらが、血清タンパク質指紋法によって、 前立腺癌と、良性の前立腺肥大症(BPH)および健康な組織を正確に識別する方法に ついて述べている。

rightらはタンパク質‐バイオチップ表面改良型レーザー脱離/イオン化質量分析法 (SELDI)を用いて、タンパク質チップアレイと結合する親和性をもつタンパク質を 検出した。Wrightらは次に、前立腺癌と癌でない一群をなるべく少数のタンパク質で 区別するため、見つかったタンパク質数をしぼっていくアルゴリズムを学習した人工 知能を用いた。血清試料は前立腺癌の患者167人と、BPH患者77人、健常者82人から採 取された。SELDIは779のタンパク質のピークを検出し、クラスター化とピークアライ ンメントを経て、分類に必要なタンパク質は9つに絞られた。

て、この分類法はどのくらい特異的なのだろうか。BPHあるいは健常者と前立腺癌 患者を識別する総合的な感度は83%、特異性は97%、陽性予測値は96%であった。これ はPSA検査に比べて非常によい。PSA検査の感度は90%より大きいが、特異性はたった の25%である。血清指紋法の使用により、不必要な細胞診をかなり減らすことができ そうだ。細胞診は、分類が正確ならばその必要がなかった人にとっては相当不安をも たらすものである。

のスクリーニング技術の他の利点として、前立腺癌の早期発見などがある。

rightの経験によれば、PSAスクリーニングよりこの指紋法のほうが5年以上も早く前 立腺癌を疑えるかもしれないことを示している。腫瘍には微小不均一性があるので、 単一のマーカーより複数の生体マーカーを使うほうが効果が高そうだとしても驚くべ きではないかもしれない。次の段階は、攻撃的な癌とそうでない癌を区別する他の生 体マーカーの同定と、この早期発見のための分類システムをできるだけ効果的にする ことである。

doi:10.1038/nrc869

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