どうあがいても勝てない状況
Nature Reviews Cancer
2002年5月1日
ヒトパピローマウイルス(HPV)は子宮頸癌の要因だが、子宮頸部のHPV感染はご普通に見られ、通常は一過性なので、HPVが唯一の発癌要因とは考えられない。持続性で子宮頸部上皮内新形成(CIN)や浸潤性癌に進行する症例では、素因をつくるなんらかの別の因子が関与するに違いない。国際癌研究機関(IARC)多発生源性子宮頸癌研究グループは、今回、長期にわたって疑われてきた経口避妊薬の使用と多産という2つの因子のそれぞれが子宮頸癌の危険因子であることを確認している。
口避妊薬と多産は長い間、子宮頸癌の危険因子の疑いがもたれてきたが、以前の研 究の多くには性行動などの他の変数による混乱が見られた。さらに、HPVはほぼ常に 子宮頸癌に存在するのに、これまでの研究はHPVの状態を考慮せず、結果が偏ってい る可能性がある。
者らは、四大陸出身の患者について、その場にある癌腫と浸潤性子宮頸癌および検 査時にHPV陽性だった対照を用いた症例−対照研究の共同調査を利用した。子宮頸部 または生検標本から剥脱(はくだつ)させた細胞のHPV DNAの検出と型別には、HPV L1遺伝子を標的とするポリメラーゼ連鎖反応増幅法を用いた。
口避妊薬を使用していた女性では、子宮頸癌を発症する危険度が使用期間に伴って増加した。経口避妊薬を使った経験のない女性に比較すると、5年未満の使用では危険度が増加しないが、10年以上の使用で4倍増加した。第二の出産経歴との関係の研究では、7回妊娠した女性は、1、2回しか妊娠していない女性に比較して2.3倍の危険度の増加が見られた。また、妊娠経験のない女性に比較すると、7回妊娠した女性では3.8倍の増加が見られた。
口避妊薬と出産経歴、および子宮頸癌の増加との間には明らかに関連がある。 IARC研究グループは、経口避妊薬の使用または出産経歴と、対照になりそうだと選択した個体におけるHPV陽性の検出との間には関連がないことも示した。このことから、経口避妊薬と出産経歴は、HPV感染の獲得または持続を増加させることによって作用するのではなく、HPV感染のCINおよび浸潤性癌への進行を別個に促進することによって作用することが示唆される。この研究にはまだ未解明な部分が多いが、特に子宮頸癌がまん延し、信頼できる細胞学的スクリーニングが行われにくい発展途上国では解決策が緊急に必要とされている。
doi:10.1038/nrc810
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