Highlight

細胞周期の進行を調節する

Nature Reviews Cancer

2002年5月1日

細胞周期に入る細胞には、DNA損傷または不完全なDNA複製を監視する機構が適切に配 置されている。これらの機構をチェックポイントとよび、損傷を受けたDNAが修復さ れないかぎり、細胞周期が先に進行するのを防ぐ作用をする。損傷を受けたDNAや不 完全に複製されたDNAは特有の構造をつくり、チェックポイントがこれを認識すると 活性化するとされている。しかし、これらの構造やこの合図を送る機構についてはあ まりわかっていない。Nature Cell Biologyの5月号で発表される英国癌研究所の Hiroshi Murakamiらによる新しい研究は、分裂酵母でS期チェックポイントの誘導と 活性化に関与する2つのタンパク質を同定している。

rp1pとCdc18pは、DNA複製開始に関与するタンパク質である。DNA複製開始の過程 で、ループ構造が形成され、この構造がCds1pチェックポイントプロテインキナーゼ およびS期チェックポイント経路というDNA複製のチェックポイントの全部位を活性化 する。Murakamiらは今回、この経路の活性化とこれらのループの維持にはOrp1pと Cdc18pの両方が必要なことを示している。ところが、予想に反して、DNAが損傷を受 けている場合には、Orp1とCdc18がなくてもDNA損傷のチェックポイントが活性化され る。

rp1pとCdc18pはDNA複製の開始時にDNA上に存在するので、この2つのタンパク質は複 製フォークが分離しないように維持するのを助けるのに重要で、この働きによって Cds1とS期のチェックポイントの活性化がもたらされるのかもしれない。

doi:10.1038/fake877

「レビューハイライト」記事一覧へ戻る

プライバシーマーク制度