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再発までのカウントダウン

Nature Reviews Cancer

2002年3月1日

結腸直腸癌の手術を受けた患者が手術後に再発するかどうかは、何によって決まるのだろうか? 結腸直腸癌の予後において、デュークス組織病理学分類法は、長年にわたって中心的な役割を果たしてきた。しかし同じデュークス分類の腫瘍患者でも転帰が大きく異なることがある。  Bert Vogelsteinたちがランセット誌1月19日号に発表した研究では、「デジタル一塩基多型(SNP)」という新たな分子レベルの技法を用いて、腫瘍細胞の染色体8pと18qに見られる対立遺伝子不均衡と結腸直腸癌の進行との関連性が検討された。  この研究では、まず腫瘍の境界における正常な組織から精製されたDNAを利用して、これらの染色体上で問題解明の手がかりとなるSNP(腫瘍患者においてヘテロ接合になっているSNP)を探索した。このようなSNPが見つかると、顕微解剖された腫瘍組織から精製された低濃度のDNAを自動装置で384ウェルプレート上に分配し、このSNPを含む分子が各ウェルに平均1つ配置されるようにした。次にPCR増幅をした後、2つの対立遺伝子を区別できる蛍光プローブを使って対立遺伝子を1つ1つ数えた。その際には統計アルゴリズムを使って、検体に対立遺伝子不均衡があるかどうかを調べた。この方法を使うと、患者の個々のDNAにおける各対立遺伝子の割合を調べることが可能となる。従来はマイクロサテライトマーカーを使って対立遺伝子不均衡を調べていたが、今回の方法は精度が上がっている。その理由の1つは、この方法によって得られるPCR産物が、すべて同じ大きさであり、より大きな対立遺伝子の選択的破壊によって引き起こされる人為結果が排除されている点だ。  今回の研究では、転移の徴候がない初期散発性結腸直腸癌を発症した180人の患者が対象となった。そしてデジタルSNPを使って、外科的に除去された腫瘍の染色体8pと18qに不均衡があるかどうかが調べられた。腫瘍検体は、両方の染色体に対立遺伝子不均衡があるグループ、いずれか一方の染色体に対立遺伝子不均衡があるグループ、いずれの染色体にも対立遺伝子不均衡がないグループに分類された。この3グループで5年無病生存率を比較したところ、それぞれ58%、74%、100%と大きく異なる結果となった。この結果は、デュークス分類を含む他の変数には依存していなかった。よって対立遺伝子不均衡が顕著になれば、無病生存の可能性が低下するといった相関関係があることが判明した。  それでは対立遺伝子不均衡は、予後にどのような影響を与えるのだろうか? Vogelsteinたちは3つの見方を示している。第1が、染色体8pと18q上の重要な癌抑制遺伝子が失われているという見方だ。第2は、染色体8pと18qでの対立遺伝子不均衡は、細胞全体にわたる不安定性を反映しているだけかもしれないという見方だ。そして第3の見方は、もし結腸直腸癌の全症例で、対立遺伝子不均衡が同じような割合で蓄積しているのであれば、対立遺伝子不均衡は結腸直腸癌が存続した期間を示す尺度となるというものだ。  Vogelsteinたちは、以上3つの見方のいずれかを特に支持しているわけではないが、従来の研究では、少なくとも9つの染色体における対立遺伝子不均衡と結腸直腸癌の予後との間に相関関係が見出されている。このことは、特定の癌抑制因子が失われているのではなく、一般的な異数性が腫瘍の進行の原因となっている可能性を示している。他の種類の癌の事例でも、類似の相関関係が見出されている。ということは、究極的には同じデジタルSNPベースの検定を使って、すべての癌患者の転帰を予測できる可能性が生まれたということなのだ。

doi:10.1038/fake879

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