干し草の山から針を見つける
Nature Reviews Cancer
2007年7月1日
Finding needles in a haystack
乳癌の家族性リスクの原因となる遺伝子のうち、同定されているものは25%に満たず、中等度を上回るリスクをもたらすバリアント遺伝子が、残る75%の大部分を成すものと思われる。最近、全ゲノム関連解析により乳癌感受性を示す遺伝子座を新たにいくつか特定したとの報告が、Nature誌で1件、Nature Genetics誌で2件発表された。
Douglas Eastonらはまず、英国人を対象に、一塩基多型(SNP)266,722個のパネルから、家族性乳癌の390例と対照364例との差が最も有意であった12,711個を特定した。さらに癌患者3,990例および対照3,916例を対象に上記SNPを検討し、試験22件の浸潤性乳癌21,860例、in situ癌988例、対照22,578例について、最も有意なSNP 30個の遺伝子型を明らかにした。このうち6個は有意性が≦10–5であり、5個は遺伝子または遺伝子を含む連鎖不平衡(LD)ブロックにあった。1個は乳癌で増殖および過剰発現する受容体チロシンキナーゼ、線維芽細胞増殖因子受容体2(FGFR2)のイントロン内にあり、2個はクロマチンタンパク質の高移動度グループのメンバーである3塩基反復配列9(TNRC9)の5′末端を含むLDブロックにあった。4個目はマイトジェン活性化タンパク質キナーゼキナーゼキナーゼ1(MAP3K1)を含む別のLDブロック内にあり、5個目のSNPは、Fアクチン結合タンパク質であり細胞骨格関連タンパク質であるリンパ球特異的タンパク質1(LSP1)のイントロンにあった。6番目のSNPは8番染色体上の領域にあり、遺伝子は不明であったが、前立腺癌に重要であることがわかっている他の遺伝子座に近い位置にあった。
David Hunterらは、浸潤性乳癌の白人女性1,145例および看護婦健康調査の対照1,142例を対象に、SNP 528,173個の遺伝子型を分析した。Eastonらの試験と同じく、最も有意なSNP 2個はFGFR2のイントロン2にあった。この結果は、他の前向きコホート試験3件から追加した患者1,776例および対照2,072例によって裏付けられた。上記両試験から、FGFR2には乳癌の感受性遺伝子座があることがわかるが、原因となるバリアント遺伝子の特定には、さらに検討を重ねる必要がある。
Simon StaceyとKari Stefanssonらは、アイスランドの乳癌患者1,600例および対照11,563例を対象にSNP 311,524個について調べ、アイスランド、スウェーデン、スペイン、オランダ、米国の追加サンプルセット5件で、P値が最も小さいSNP10個の遺伝子型を明らかにした。どのセットについても、乳癌リスクを高めていたSNPは、染色体2q35上および16q12上にある2個であった。この両対立遺伝子も、エストロゲン受容体陽性乳癌のリスクと特異的に関連していた。2q35上のSNPを含む領域に既知の遺伝子はなかった。16q12上のSNPは、Eastonらが特定した遺伝子のひとつであるTNRC9の5′末端に近い。
以上の試験により、乳癌リスクの遺伝学に関する理解が深まった。この方法を用いれば、他にも感受性対立遺伝子が見つかるものと思われる。
doi:10.1038/nrc2177
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