進化に守られ、癌で異変
Nature Reviews Cancer
2007年11月1日
Conserved by evolution, but altered in cancer
ゲノムには、ヒトでもマウスでもラットでも一切変わらない領域があり、それに重要な機能があることがうかがえる。新たな試験では、このいわゆる超保存領域(UCR)の発現が変化を来すと、さまざまな癌が生じることが明らかになった。
最近のいくつかの試験からは、古典的な癌遺伝子および腫瘍抑制因子のほか、マイクロRNA(miRNA)にも、癌で果たす役割があることがわかっている。しかし、非コードRNAの種類はこれだけではない。タンパク質をコードしていなくても、ゲノムのほかの多くの部分が発現され、機能的に重要とみられる。UCRは、その一種であり、機能的な重要性がマウスを用いた欠失実験により明らかにされている。
G A Calinらは、正常組織のUCRをマイクロアレイプロファイリングし、転写されたもの、すなわちT-UCRを特定した。定量的PCRおよびノーザンブロット法を用いてさらに詳細に検討したところ、正常リンパ球と慢性リンパ球性白血病細胞との間で発現が有意に異なる特定のT-UCRが2つあった。さらに、T-UCR発現シグネチャによって、多岐にわたる正常細胞と癌細胞とを区別できるかどうかを探った。癌検体133個および対応する正常対照40個のパネルを用いたところ、8~61個のT-UCRシグネチャによって、対応する正常細胞から特異的な癌細胞が識別された。
では、このT-UCRの働きは何であり、発現の変化は癌とどう関連するのだろうか。この著者らはまず、脆弱部位、増幅領域およびヘテロ接合性のない領域など、癌との関係が既に明らかにされている領域と、T-UCRの位置とが相関していることを明らかにした。ある症例では、この領域のタンパク質コード遺伝子に変異が全く認められず、T-UCRの変化が癌感受性を助長するものであることがわかる。次に、いくつかのT-UCRの発現が特定のmiRNAの発現と負の相関関係にあること、いくつかのmiRNA-T-UCR対の間に有意なアンチセンス相補性があることを明らかにし、機能的なつながりを示唆している。上記の相互作用は4例のin vitroレポーター系で確認されており、いくつかはin vivoで機能することが観察されている。
最後にこの著者らは、あるT-UCRの発癌可能性を明らかにしている。結腸癌でのアップレギュレートが最も著明なT-UCRの1つを選択し、短い2本鎖RNAを用いてそれをダウンレギュレートした。これにより増殖は低下し、アポトーシスが増大した。
癌で果たすT-UCRの役割は、まだ探索が始まったばかりで、それが腫瘍形成での役割を担う最新の要素である可能性は低い。ゲノムについてますます詳しいことがわかってくる中で、遺伝学者が機能性の高い要素を見つけるため、癌生物学者は、その多くに癌遺伝子および腫瘍抑制因子としての役割を期待することができる。
doi:10.1038/nrc2261
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