マウス1のテール
Nature Reviews Cancer
2007年12月1日
A TALE of one Meis
混合白血病(MLL)ヒストンメチルトランスフェラーゼをもつ融合タンパク質は、部分的にHox遺伝子の脱制御を介し、骨髄系前駆細胞を白血病幹細胞(LSC)に形質転換させることによって、数種類の白血病を誘導する。しかし、Hox遺伝子の脱制御のみでは、MLL再配列白血病の再現に不十分である。MeisおよびPbxファミリーなど、ホメオドメインタンパク質の3アミノ酸ループ延長(TALE)クラスのメンバーもまた、Hox転写因子のDNA結合を増強させ、白血病発生にかかわってきたことから、MLL白血病に関与していると思われる。M Clearyらは現在、TALEホメオドメインタンパク質、特にMEIS1が、MLL白血病の誘導および維持に極めて重要な役割を担っていることを明らかにしている。
Clearyらはまず、初代マウス骨髄系前駆細胞に12種類のMLL融合タンパク質を発現させ、Meis1の発現レベルが、さまざまなMLL融合癌遺伝子をもつ白血病にみられる潜伏期間と相関していることを突き止めた。すなわち、より短い潜伏期間で白血病を誘導するMLL癌遺伝子が発現する細胞は、Meis1発現レベルが高い。また、Meis1–/–マウス由来の胎児肝(FL)細胞を用いた形質転換アッセイでは、この細胞がMLL癌遺伝子による形質転換を受けず、しかも、外因性Meis1の発現によって形質転換を免れることが明らかになった。その上、MLL融合遺伝子が発現する野生型FL細胞に、Meis1の短いヘアピンRNAまたはドミナントネガティブなMEIS1を発現させると、クローン化能が損なわれた。以上のデータは、MEIS1がMLLを介する形質転換の開始にも維持にも関与していることを示す。
MEIS1はin vivoでの白血病発生に影響を及ぼすのだろうか。MLL融合癌遺伝子と、Meis1(MLL/Meis1)または空のベクター(MLL/v)のいずれかが発現する骨髄系前駆細胞を同数のコロニー形成細胞(CFC)に移植し、さらにそれを同系マウスに移植した。Clearyらは、両マウスコホートとも類似の白血病を発病したが、MLL/Meis1細胞を移植したマウスの白血病は潜伏期間がはるかに短いことを突き止めた。これは、低分化および増殖亢進と相関しており、BMI1-INK4a軸の揺れが原因とみられた。さらに、白血病マウス脾のCFC数(LSCの特性をもつ)は、MLL/Meis1白血病がMLL/v白血病の7倍であった。すなわちMeis1には、MLL白血病誘発を律速する役割がある。
MEIS1は、MLL形質転換をどうメディエートするのだろうか。Clearyらは、さまざまなMeis1の変異体を用いて構造-機能分析を実施し、Pbx TALEタンパク質と相互作用できないものは、Meis1–/– Fl細胞をMLL形質転換から守ることができないことを突き止めた。また、Pbx2およびPbx3は、MLLによって形質転換した骨髄系前駆細胞に発現したPbxファミリー全体の90 %超を占める。Pbx2またはPbx3のいずれかが消失しただけでは、MLLによる形質転換の遮断に十分ではないが、両方が消失すると、形質転換が有意に抑えられた。以上のデータは、MEIS1がPbxタンパク質をもつDNA結合転写複合体を形成し、MLLによる形質転換を助長することを裏付けている。
興味深いことに、ヒト白血病にはMEIS1の発現レベルの高いMLL融合遺伝子が多く、MEIS1はそのような白血病の発生および維持にも極めて重要であることがうかがえる。以上のことから、TALEタンパク質、特にMEIS1を治療の標的として検討する理由は十分にある。
doi:10.1038/nrc2280
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