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Nature Reviews Cancer

2008年10月1日

Rewriting the ending

急速に分裂する腫瘍細胞が不死化に至るには、テロメアの長さを維持することが不可欠である。このため、腫瘍の90%で高い活性レベルを示すテロメラーゼは、重要な抗がん治療の標的である。しかし、ほかにどのような因子がテロメアの長さをコントロールしているのかも、また、もう1つのテロメアの延長方法、すなわち相同的組換えによるテロメラーゼに依存しないテロメア維持機構(ALT)が、テロメラーゼ陰性腫瘍においてどのように活性化されるのかも、ほとんどわかっていない。

Maria BlascoらはOncogeneで、DNAメチル化がテロメアの長さに及ぼす影響にスポットを当てている。Blascoらは、さまざまなヒトがん細胞系および非悪性形質転換細胞でハイスループットの定量的蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)を実施し、テロメアの長さを測定して平均値を計算し、極めて長い(>6.5 kb)か、または極めて短い(<2.5 kb)テロメアをもつ核の割合を求めた。実験の結果、予想通り、テロメラーゼ活性はテロメアの長さと正の相関を示した。さらに、動原体周辺およびサブテロメアにある反復配列におけるメチル化(5つの特異的反復配列を解読して解析)と、DNA全体のメチル化(5-メチルシトシン残基の割合を求めて解析)を統合して評価したところ、テロメアの平均の長さと、調べたサブテロメア部位2カ所でのメチル化との間に、顕著な負の相関があることがわかった。一方、DNA全体のメチル化や動原体周辺のメチル化では、こうしたテロメアの平均の長さとの相関は認められず、また、DNA全体のメチル化とサブテロメアのDNAメチル化との間にも相関はなかった。

テロメラーゼ活性はプロモーターのメチル化によって調節される。そこでBlascoらは、テロメアの長さとサブテロメアのメチル化との関係が、テロメラーゼ活性と関連しているかどうかを検討した。しかし、DNA全体でも、調べた動原体周辺やサブテロメアでも、テロメラーゼ活性とDNAメチル化との相関は認められなかった。そこで研究チームは、染色体定位FISHを用い、相同的組換えのレベルを反映するテロメア姉妹染色分体交換(T-SCE)頻度を求めることによって、もう1つのテロメア延長法であるALTについて検討した。その結果、組換え頻度は非悪性形質転換細胞よりも腫瘍細胞系の方が高く、T-SCE頻度の増大は、サブテロメアの反復配列での低メチル化およびDNA全体の低メチル化と相関していた。T-SCE頻度はテロメアの長さとも相関がみられたが、テロメラーゼ活性とは相関しておらず、上記細胞でのテロメア延長は、テロメラーゼ活性以外の機序によって生じていることが示唆された。

Blascoらは、これらの結果を、検証に用いた細胞系統に代表される上皮腫瘍だけでなく、リンパ系の腫瘍にまで適用して、実験を行った。すると興味深いことに、上皮腫瘍はリンパ系の腫瘍よりもサブテロメアでのメチル化レベルが低く、T-SCEの頻度が高かった。このことから、上皮腫瘍のほうが遺伝学的に不安定であることがわかる。しかも、T-SCEの頻度という形で観察されたこの不安定性は、サブテロメアにある反復配列の低メチル化を引き起こすことが知られている5-アザ-2’-デオキシシチジンで処理することによって増大した。

サブテロメアの低メチル化ががん細胞のテロメアの長さに及ぼす影響は、がん治療にとって重要な意味をもつ。今後、テロメラーゼ阻害薬の最適な設計および使用を確実にするには、このテロメラーゼ非依存的テロメア維持機構についてさらなる解明が必要で、実際に、テロメアの延長を促してがん増殖に有利に働く可能性のある低メチル化薬の使用する際には、慎重を期さなければならない。最終的には、テロメラーゼ陰性腫瘍細胞で機能するテロメア延長機構の理解が深まれば、この過程を特異的に狙った治療薬の開発につながるだろう。

doi:10.1038/nrc2512

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