Research Highlights

罰を受けるのはALK

Nature Reviews Cancer

2008年11月1日

ALK takes the rap

網膜芽細胞腫と同じく、神経芽細胞腫にも遺伝性と散発性の腫瘍があるが、網膜芽細胞腫とは異なり、神経芽細胞腫発生の遺伝学的要因は多くが謎に包まれている。このほどNatureに発表された4報の論文により、元凶の少なくとも1つが、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)であることが判明した。

各研究グループはそれぞれ、さまざまな全ゲノムスクリーニングによってALKが散発性神経芽細胞腫の6~12%で変異していることを突き止めた。J Marisらの分析からは、ALKが主な家族性神経芽細胞腫の素因遺伝子であることが明らかになった。ALKは増幅されている場合もあれば、主としてキナーゼドメイン内にある変異ホットスポット、フェニルアラニン1174およびアルギニン1275の変異によって構成的に活性化している場合もある。さまざまな細胞株で変異型ALKを発現させると、in vivoで細胞の形質転換および腫瘍の形成が生じた。これらの細胞株と変異型ALKをもつ神経芽細胞腫細胞株で、ALKをRNA干渉により阻害したところ、大部分が増殖を停止し、明確なアポトーシスを起こしたものも若干例あった。ALKは、ほかの多くの種類の腫瘍で染色体転座によって活性化していることがわかっているため、このキナーゼを標的とする低分子標的薬の開発が進んでいる。その1つ、TAE684を用いると、増殖抑制および細胞死が引き起こされた。

神経芽細胞腫には、自然退縮する少数例を含め、さまざまな臨床表現型があるが、小児の40~50%は急速進行性の転移がんで、MYCNの増幅を伴うことが多い。さらに悪性度の高い神経芽細胞腫のサブタイプは、ALKの変異および増幅をも伴っている。しかし、ALKの変異が、MYCNと同じく予後不良の独立危険因子であるかどうかは、まだ判然としていない。上記の知見により、悪性度が高い神経芽細胞腫を発症している小児の転帰改善を目的に、ALK標的薬剤開発における今後の研究がさらに促進することが望まれる。

doi:10.1038/nrc2529

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