Research Highlights

CULの必要性?

Nature Reviews Cancer

2009年3月1日

Need for a CUL?

SRCは、数多くの重要な細胞プロセスの制御にかかわっている非受容体型チロシンキナーゼである。その活性が厳密に制御されていることはいうまでもなく、SRCの過剰発現によって細胞を形質転換させることができる。近年、ほかのがん遺伝子について調べられてきたように、George LaszloとJonathan Cooperは、「どのくらいのSRCが過剰なSRCということになるのか?」について検討した。その結果、これは、ユビキチンリガーゼであるcullin 5(CUL5)の発現に依存することがわかった。

SRCの異なった発現レベルの比較が行えるように、LaszloとCooperは、不死化させたSrc欠損マウスの胎仔線維芽細胞(MEFs)に、野生型や変異型Src(恒常的活性化型変異体であるSRCYFや部分的活性化型変異体であるSRCQ*)のコンストラクトを導入した。そして、これらの細胞におけるSRCのmRNAおよびタンパク質の発現レベルを、不死化した野生型MEFsにおけるSRCの固有の発現レベルと比較した。変異型SRCを過剰発現した場合、予想どおり,形質転換を誘導したが、変異型SRCを内因性のSrcと同じmRNAレベルで発現させると、細胞は異常を起こさなかった。一方、タンパク質発現レベルを比較した結果、変異型SRCタンパク質は内因性の野生型SRCに比べ20%以上も低い発現レベルであることがわかった。また、これまでCBLユビキチンリガーゼがSRCの分解に関与しているとされていたが、ショートヘアピンRNAを用いた解析により、CUL5ユビキチンリガーゼがSRCの分解を制御していることが示された。重要なことに、さらに実験を行った結果、CUL5は、活性化されていない野生型SRCには何も影響を及ぼさなかったが、活性化状態の野生型SRCの分解を誘導することが示された。

CUL5の発現を欠如させることによる影響は、in vivoにおいても認められた。SRCYFが内因性の野生型SRCのmRNAと同等のレベルで発現している細胞を異種移植すると、CUL5非存在下のほうが容易に増殖した。しかしながら、SRCYFが内因性の野生型SRCのmRNAと同等のレベルで発現した細胞による腫瘍は、CUL5の存在にかかわらず、悪性度の低い線維芽肉腫や横紋筋肉腫であった。これらの表現型は、SRCYFを過剰発現するMEFsによって形成された富血管性の血管肉腫と対照的であった。こうした違いは、CUL5がSRC単独ではなく、他の経路も制御している可能性を示している。プレリミナリーな解析ではあるが、CUL5は活性化されたSRCのみならず、SRC下流の負の制御因子の1つであるDOK1をも制御しうることが示唆されている。

CUL5は複数のSOCS(suppressors of cytokine signaling)タンパク質と複合体を形成して機能する。いくつかのSOCSタンパク質は、SRC関連性の経路によって誘導される。このことは、SRCがSOCSタンパク質の発現を誘導し、その後、これらのSOCSタンパク質はSRCに結合し、CUL5の結合が可能となることでSRCが分解されるという負のフィードバックループの存在が示唆される。このように、CUL5は腫瘍抑制因子として機能しうると考えられ、この仮説を支持するように、CUL5を含む11q22–23のヘテロ接合性の消失(LOH)がさまざまなヒトの腫瘍において認められる。これらの興味深い所見を検証するためには、さらなる研究が必要である。

doi:10.1038/nrc2611

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