Review Highlight
成長ホルモン放出ホルモンのアンタゴニスト:癌に対する新たな治療法
Nature Reviews Endocrinology
2008年1月1日
Antagonists of growth-hormone-releasing hormone an emerging new therapy for cancer
本稿では、腫瘍治療における成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)アンタ ゴニストの有効性を概説する。GHRH アンタゴニストは、ヌードマウスに移 植された種々のヒト癌細胞株の増殖を抑制する。このような腫瘍の例として、 乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、前立腺癌、肺癌(小細胞肺癌および非小細胞肺 癌)、腎臓癌、膵癌、胃癌、結腸直腸癌、脳腫瘍(悪性神経膠腫)、骨原性肉 腫、非ホジキンリンパ腫などが挙げられる。GHRH アンタゴニストの抗腫瘍 効果は、下垂体からのGH 分泌が抑制され、その結果、肝臓でのインスリン 様成長因子I(IGF-I)濃度が低下することによって間接的にも作用する。し かし、GHRH アンタゴニストは、主に直接腫瘍細胞に作用する。GHRH リガ ンドは種々のヒト癌に局在し、オートクリンまたはパラクリン増殖因子とし て作用する可能性がある。下垂体型GHRH 受容体とそのスプライスバリア ントである受容体が、多くのヒト癌で認められる。これらのことよりGHRH アンタゴニストの腫瘍抑制作用は、腫瘍由来のGHRH の作用を阻害するこ とによることが推察される。また、GHRH アンタゴニストは腫瘍によるIGF-I とIGF-II のいずれか、または両方の産生を阻害することによって、癌の増殖 を抑制することも推察される。今後、さらに強力なGHRH アンタゴニストが 開発されるならば、種々の癌に有効な治療薬が創りだされる可能性がある。
doi:10.1038/ncpendmet0677
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