早期発症型AD におけるアミロイドβ斑とグルコース代謝
Nature Reviews Neurology
2010年3月1日
Amyloid-β plaques and glucose metabolism in earlyonset AD
カリフォルニア大学のGil Rabinovici らの試験によれば、若年のアルツハイマー病(AD)患者における重度の皮質代謝の低下は、アミロイドβ(Aβ)斑 の蓄積量増加では説明することができない。「ほとんどの人は、早期発症型AD の侵襲的な表現型は病理的変化の強さと関連していると考えている。われわれの試験において、若年で発症した患者は人生の早い時 期から斑が形成されるだけではなく、存在している病理的変化に対して選択的脆弱性がある可能性が示されている。」とRabinovici は説明する。
65 歳未満の若年でAD を発症した患者は、高齢で発症した患者に比べてより侵襲的な臨床症状を呈し、生存期間が短いことが多い。これまでの研究からは、早期発症型AD 患者は晩期発症型と比べて認知機能 障害のパターンが異なっており、皮質萎縮、低灌流、代謝低下がより重症となることも示されている。 Rabinovici らはAD 患者39 例(43 ~ 82 歳) を対象に、放射標識トレーサとして脳のAβ 斑の測定にPittsburgh compound B(PIB)、同じく脳のグルコース代謝の測定にフルオロデオキシグルコース(FDG)を用いて、PET 試験を行った。著者らは患者を“早期発症型”(55 ± 5.9 歳)と“晩期発症型”(72±4.7 歳)の2 群に割り付け、認知機能検査の成績、Aβ 斑の蓄積量と分布、グルコース代謝を両群間で比較した。認知機能の正常な参加者30 人を対照とした。
著者らは、すべてのAD 患者が対照群に比べて、より多くの線維性Aβ 斑を前頭皮質、頭頂葉皮質、外側側頭皮質に有していることを見出した。しかし、図にみられるように、Rabinovici らの観察では斑の蓄 積量や分布には、早期発症型患者と晩期発症型患者の間に違いが認められなかった。それとは対照的に、同じくこの図によれば、早期発症型患者では楔前部、側頭頭頂、後頭皮質のグルコース代謝が晩期発症型患者に比べて有意に低かった。それゆえ、著者らは若年発症の患者ではAβ 病理の影響に対する代謝の脆弱性が高いと考えている。
Rabinovici は「これは若年AD 患者と高齢AD 患者のアミロイドβ 斑をin vivo で直接比較した最初の研究である。アミロイド蓄積量は患者が若年でも高齢でも関係なく同等であった」と説明し、最も神経毒性の強い可溶性Aβ 種とAD 発症年齢との関係に興味を持っているという。また彼は、若年患者の発症するAD が、非定型的できわめて限局的な神経変性症候群となる傾向が強い理由を検討する計画も立てている。
doi:10.1038/nrneurol.2010.10
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