Review Highlight

アルツハイマー病におけるPET の利用

Nature Reviews Neurology

2010年2月1日

The use of PET in Alzheimer disease

認知症の最大の原因であるアルツハイマー病（AD）では、基礎疾患の病理が、ほぼ間違いなく認知症状の発現に何年も先行して発現する。これを背景に、AD に対する早期の診断マーカーや疾患修飾治療を発見する取り組みが行われている。PET を用いれば、生体のさまざまな脳システムの観察が可能であることから、PET を用いて脳グルコース代謝の変化や種々の神経伝達物質系、神経炎症、特にアミロイド沈着などのAD 患者に特徴的な蛋白質凝集体を調べることができる。これらの検査は、AD の基礎をなす複雑な病態生理学的機構のさらなる解明を助けるとともに、臨床現場におけるAD の早期診断と鑑別診断に役立つ。PET 検査は将来的に、新たな治療標的の特定や治療効果のモニタリングにも有用となるであろう。アミロイドイメージングは、AD の早期診断マーカーとして、また、抗アミロイドβ療法に適した患者の選択に有用となる可能性がある。一方、脳グルコース代謝は、疾患進行を観察するのに適したPETマーカーになる可能性がある。マルチトレーサPET 検査は手間と費用がかかるため、AD に対して日常的 に用いられる可能性は近い将来においては低いが、研究においては非常に有益な情報をもたらす。

doi:10.1038/nrneurol.2009.217

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