Research Highlights

脳卒中の発症リスクは塞栓の特定によって予測可能

Nature Reviews Neurology

2010年8月1日

Stroke Embolus detection could predict risk of stroke

無症候性の頸動脈狭窄の既往歴がある患者は、脳卒中症例の中で大きな割合を占めているが、発症リスクが最も高い患者や手術を要する患者を特定することは困難であると共に、議論のあるところである。しかし今回、神経科医のあるグループが、同側性脳卒中の発症リスクが最も高い患者を特定する新しい方法について示唆した。

不確かなことではあるが、無症候性の頸動脈狭窄を有する患者のほとんどは、後遺障害を引き起こす重篤な脳卒中の発症前に一過性脳虚血発作を経験することはなく、また、その発症を予測するマーカーは存在し ていない。その結果、脳卒中リスクが非常に低い患者に対して、脳卒中予防のために約85 もの操作を必要とするような、不必要でリスクの高い予防的外科手術がしばしば行われている。

研究チームは、脳の血管内を流れる血流を測定し、塞栓ともいえる小さな血液の塊を検出するために、経頭蓋ドップラー超音波法を用いた。筆頭著者である英国ロンドン大学St George 校のHugh Markus によると、「塞栓は周囲にある血液細胞よりも多くの超音波を反射し、結果として短時間の高密度シグナルがレコーダー上で視認され、特徴的なピッという音(blip)やチーッチーッという音(chirp)として聴取される。」という。

これらの塞栓の発見により、塞栓が剥がれて脳内に流れ込む前に、頸動脈内膜切除術と呼ばれる適切な外科的インターベンションを計画的に実施することができ、それによって脳卒中を予防することができる可能 性がある。

British Heart Foundation(英国心臓財団)の資金提供により実施されたAsymptomatic Carotid Emboli Study は、明確な結論がなく説得力が乏しい成績に終わった過去にの数々の研究よりも大規模であった。研究者らは1999 年~ 2007 年の期間にわたって、世界中から無症候性頸動脈狭窄を有する患者482 例(そのうちの467 例で利用可能なデータが得られた)を試験に組み入れた。

研究チームは、痛みや侵襲のない手技によるこの塞栓の特定は、今後2 年間に脳卒中発症リスクが高い患者を予測する独立した因子となることを明らかにし、Markus は「手術すべき患者とそうでない患者の特定 に利用可能である」と述べている。彼はさらに、「この技術が臨床現場で広く利用されるようになるには、特異的な塞栓シグナルを特定するための信頼性の高いオートメーション化した技術を早急に開発しなければならない」とも述べている。

doi:10.1038/nrneurol.2010.96

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